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ホテル情報誌「ホテルジャンキーズ」 ■韓流ドラマのホテルシーン 比較文化研究者の安藤奈美さんによる、 韓流ドラマに登場するホテル像を通して見た 韓国の文化・風俗の考察です。 とはいっても、まったく硬い話ではありません。 ドラマに登場するスターたちの噂話から 日本では意外に知られていない日常生活の習慣まで 「あ、それでドラマではあんなことを…」がわかります。 ドラマ中に登場しているホテルシーンの撮影場所解説も。 ドロドロ復讐劇の舞台になるホテル 韓流ドラマを見ながら、あ、ここは日本と違うな…と気づくことがいくつかある。どれもドラマを見るまでは知らなかった生活習慣ばかりで、日本とはまったく作法が逆の行為が多いことにも驚いた。 まず、最初にびっくりしたのが、オンドル部屋での食事の時に女性が片膝を立てて座ること。ちなみに韓国ではこれは正座にあたり、正しい作法である。 玄関で靴を脱ぐ時に方向を変えて反対向きにしてそろえず、そのまま脱いで部屋に入り、退出する時は後ろ向きに靴を履いて出ていくこと。 鍋物やスープは一つのものをみんなで直スプーンで食べること。スープには茶碗のご飯をかぱっとひっくり返して入れて食べたりもする。 食事の席で、相手のスプーンのご飯の上におかずをのせてやること。これは親愛の情を表している。 インスタントラーメンを鍋からそのまま食べたり、鍋の蓋で冷まして食べることが一般的に行われていること。 目上の相手先を訪問して部屋に通されてもコートを脱がないこと。 一般家庭でも「ゴーストップ」と呼ばれる花札は日常的に広く行われ、家族団らんの娯楽でもあること。 ぱっと思いついただけでもこれだけあるが、きわめて日常的なシーンでカルチャーが異なっているにも関わらず、それを知らないと、お互いに相手のことを「行儀が悪い」「失礼な人だ」と誤解するのはまちがいない。 さて、本題に入ると、韓国には今でも「姦通罪」がある(第二次世界大戦前は日本の刑法にもあった)。これは、配偶者がある人が姦通をした場合、その相手と共に二人とも罰せられるというものだが、あくまでも親告罪で、配偶者が告訴しなければ罪に問われることはない。この姦通罪、けっこうよく韓流ドラマには登場する。 2008年〜09年に放映され、最高視聴率40%超という、WBCを上回る高視聴率を得た連続テレビドラマ「妻の誘惑」もそのひとつ。これでもか、これでもかというドロドロの波乱劇が次々に繰り出され、めちゃくちゃなストーリー展開と共に、ある意味、非常にオーソドックスな韓流ドラマらしいドラマである。 ストーリーは、良妻賢母だった妻が夫と友人に裏切られたために豹変し、コワイ復讐に走るというもの。ただし、妻が別人になりすまして元夫を誘惑するというあたりが、ほとんどなんでもありの韓流風。 元妻が元夫を誘惑するためにセクシーなダンスを踊って見せるのは、ノボテルアンバサダー江南のバー「Gran A」。また、元妻が、裏切った元友人に電話して、部屋で眠った元夫をわざと迎えに来させたのは、ここのホテルのスイートルーム。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.81より 上流夫人が通うのはホテルスパ 韓国では「顔の良し悪し」は学歴と同じく重要視されるため、世界でも有数の整形大国として知られている。俳優たちもほとんどが多かれ少なかれ整形しているとも言われているが、いかに医者の腕が良かろうとも、美男美女顔にするには限界がある。 現在、韓国芸能界きっての美男美女おしどりカップルとして知られているのは、5月初めにホテル新羅で結婚式をあげたばかりの「歩く中小企業」(中小企業一社分くらいの金額を稼いでいるという意味)俳優チャン・ドンゴンと女優コ・ソヨン。彼女の大学時代のモテぶりはすさまじく、通っていた大学の門の前には毎日「アッシー」志願者の高級車がずらりと並んだという。 このカップルが誕生する前までの美男美女カップルのナンバーワンは、ドラマ「ホテリアー」の若きGM(総支配人)役でも知られるキム・スンウとCM女王として売れっ子の正統美女系キム・ナムジュのカップルだった。 5年前に結婚し一男一女をもうけたが、しばらくドラマ出演はお休みしていたキム・ナムジュの8年ぶりの復帰作が、昨年、大ヒットしたドラマ「僕の妻はスーパーウーマン」。食品会社を舞台にしたコメディードラマで、韓国では昨年の放映時には視聴率30%を超えた。 キム・ナムジュが演じるのは、計算高く、将来性を買って医大生と結婚したもののハズレだった妻。意志薄弱なダメ夫をなんとか改造しようと、夫の出世のために慣れない内助の功を発揮すべく奮闘する。 が、会社社会では夫の会社での序列がイコール妻たちの序列にもなり、ゴマスリ、貢物なんぞは当たり前。しかも、社長夫人は学生時代には格下とばかにしていた元同級生。かつてはモテまくりクイーンとしてならしていたプライドもズタズタになるが、夫の出世は自分の地位向上のためとへこたれずにがんばる…というドラマ展開。 夫役を演じるのは、身長185センチの長身に端正な顔だちのオ・ジホ。韓国のスーパースター、エリックが主演して話題となったテレビドラマ「新入社員」 (2005年、MBC)で、彼の同期のライバル社員役をクールに演じて注目された。現在放映中の主役をつとめる時代劇「推奴」(KBS)も絶好調で、ここのところ、韓国では人気上昇中のひとりである。 「僕の妻はスーパーウーマン」でドラマの舞台としてしばしば登場するのは、ソウル市庁舎広場にあるソウルプラザホテル。 二人の結婚式の舞台となったのは、「ジスタムハウス」。また、上流階級の奥様たちが通うところとして登場したのは同ホテル内の「プラザ・スパクラブ」。女たちが暇と金を誇示しあい、密かにお互いの「商品状態」をチェックしあう場所でもある。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.80より スパイ合戦の舞台になるホテル まるでスパイドラマのような展開が、ただいまお隣の韓国では進行中。3月末、黄海上の南北境界線付近で起きた韓国海軍の哨戒艦「天安」の沈没事件が、北朝鮮によるテロ攻撃なのか、それとも事故なのか、はたまた国際スパイ合戦の中で巧妙に北の仕業のように仕組まれたものなのか。さまざまな憶測が飛び交っている。事実とはドラマよりも奇なりをまさに地で行くこと、ドラマのような出来事が現実に起きているのが隣国の現実なのだと気づかされた。そういう目であらためて韓国のテレビドラマの定番テーマのひとつ、南北スパイドラマものを観ると興味深い。 今春から日本でも地上波で放映されているテレビドラマ「アイリス」(2009年KBS放映)は、南北分断をテーマとしたスパイもの。何とか朝鮮戦争の再発を防ごうとする者がいれば、南北統一が個人的な利益にはつながらないため壊そうとする者もいる。分断の長い年月の間に組織も個人も複雑にからみあっていて、関係性も単純ではない。誰が敵で、誰が味方なのか、わからないといった展開でストーリーも二転三転する。 主役は、かつて同じく南北スパイ合戦ものでヒットしたドラマ「白夜」でも主演をつとめた元祖韓流スターのひとり、イ・ビョンホン。恋人役は、引退後きっぱり表に出ない「韓国の山口百恵」、ことシム・ウナだった。 今回のお相手役は、韓国でも才色兼備で有名なキム・テヒ。「完璧な美人」と言われ、明眸皓歯とは彼女のような顔のことを言うのかと納得する美しい瞳と素晴らしい歯並びの笑顔が印象的である。 彼女は芸能界でも学歴が重視される韓国社会では、泣く子も黙る最高峰、ソウル大学卒の才媛。在学中に地下鉄でスカウトされて女優になり、継子イジメに記憶喪失&不治の病と韓国ドラマのエッセンスがてんこ盛りで有名なテレビドラマ「天国の階段」でヒール役を演じて有名になった。 もっとも、ずっと演技が下手と言われ続け、本人もかなり気にしているらしい。余談だが、この「天国の階段」で劇中、彼女の弟役を演じて好演したイ・ワンは4つ年下の実弟だが、こちらは体育大出の肉体派。 さて、ドラマ「アイリス」は、イ・ビョンホン演じる国家安全局(NSS)要員と、彼の上司のプロファイラーであるキム・テヒとの恋物語でもあるのだが、日本の秋田でもロケが行われた。田沢湖畔のシーンで舞台となったホテルは、田沢湖ホテル イスキア エステ&カフェ。 一方、実にさまざまなシーンの舞台として使い勝手よく使われたのは、ソウルの繁華街、明洞にあるロッテホテル。 ソウルで南北首脳会談が開かれる予定だった場所としてロビーの見回りチェックのシーンや南北調査団のミーティングシーンなどで登場するかと思えば、スイートルームは韓国使節団訪朝ホテルとして北朝鮮の平城一の特級ホテルのシーンにも使われている。さらには、小宴会場は北朝鮮のハンガリー本部のシーンにも登場する。系列のホテルが、東京の錦糸町にもオープンした。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.79より 憧れのライフスタイルなホテル 韓国ドラマでしばしば登場するのが豪華なインテリアのマンションライフ。そもそもトレンディードラマの主人公たちのライフスタイルは視聴者たちの憧れとして設定されているので、ドラマを見ていると、かの地の先端をゆくオシャレな人びとがどんな風に暮らしているのかがうかがえておもしろい。放映年度を見ると、時代と共に憧れの住居タイプやライフスタイルも少しずつ変化してきていることがわかる。 2007年放映で大ヒットした「コーヒープリンス一号店」では、4人の若者たちそれぞれの住まいとライフスタイルが個性的で興味深かった。 父亡き後、家長として身を粉にして働き家計を支えているユン・ウネ演じる主人公の女の子の家は、貧しいとはいえ二階建ての一戸建て。十年くらい前の韓国ドラマによく出てきたような半地下の一間か二間の長屋暮らしや屋上部屋というのではない。韓国も豊かになったのである。 一方、ちょっとした財閥ファミリーに所属する裕福な主人公男性2名の暮らしぶりは、まさにいまどきの若者の憧れであろうと思われるもの。 コン・ユ演じる財閥の跡取り息子でコーヒーショップのオーナー修行中の主人公が住んでいるのは、広い屋上をリゾートホテルのデッキテラス風にし、デザインホテルの雰囲気漂うインテリアのペントハウス。 そして、彼のいとこ役、ナチュラル感覚が支持され最近人気上昇中のチェ・ハンソン演じるオシャレな放送音楽家が住んでいるのは、自然に恵まれた高級住宅街にあるウッディー感覚の庭つき一軒家。 彼の恋人であり、ニューヨーク帰りの新進画家の女性が住んでいるのは、スキップフロアのロフト風のインテリアの家。実はこの家、ドラマの女性監督の自宅がモデルだそうである。 同じく2007年放映の「不良カップル」は本欄でも以前取り上げたことがあるが、韓国のファッション界をリードする女性誌の編集長が主人公の物語。 彼女が住んでいるマンションの外観はソウルでも有数の高級マンションがモデルに使われている。エントランスに噴水があるようなわかりやすい高級感のマンションだが、インテリアでポイントになっているのは衣裳部屋。ブティックさながらにシャツやセーターが並べられ、バッグやアクセサリーが陳列されている。リビングルームやバスルームの豪華さはまあまあだが、それに比してベッドルームがちょっと貧相なのはご愛嬌。 もうちょっと時代が下ると、ひたすらバブリーでこれでもかという豪華志向だった。2004年に放映され大ヒットした「パリの恋人」で、自動車メーカーの跡取り息子がパリで住んでいる部屋の舞台として撮影に使われたのは、三成(サムソン)にあり、ソウルでも有数の豪華なレジデンスホテルとして知られるオークウッドプレミア最上階のペントハウス。 余談だが、ここの1階のカフェ「Oak Lounge」は、「冬のソナタ」でヨン様がチェジューに別の男と幸せになりなさいと語りかける切ないシーンでも使われたところとして、その筋では有名。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.78より 兵役前の男の甘い香りがする?ホテル 最近、韓国では、ある大手財閥の御曹司と元人気テレビアナウンサーのカップルが、子供をアメリカで出産して米国籍を取らせたことが、兵役逃れだと問題視され、大きなニュースとなった。 一方、アメリカ永住権も持っていたので、そのまま維持すれば兵役につかなくてもすんだ人気グループ「神話」のエリックは、これを放棄し、わざわざ兵役について男を上げた。 韓流トップスターのひとりにあげられるソン・スンホンはその反対で、兵役逃れがバレた口。このときは大変だった。韓国では兵役逃れに対する世間の目はきびしいこともあり、報道も容赦がなかった。短パン姿での兵役資格調査の様子もすべてテレビカメラに公開され、世間の目にさらされた。 もっともマスコミにはさんざん叩かれたものの、女性ファンたちは「あれじゃかわいそう…」とけっこう寛容だった。前号の本欄では、デビュー当時のお宝映像が見られるドラマをご紹介したが、あの頃の魅力のひとつでもある、スンホンの母性本能をかきたてるようなところが奏効したのかもしれない。 兵役を終え、約二年間のブランクの後どうなるかが興味深いところだったが、なかなかいい男になって帰ってきた。叩かれたときの苦労も兵役もすべて男の肥やしにし、さらに野性味やタフさが加わった。 さて、2003年のテレビドラマ「夏の香り」は、そんなスンホンの兵役逃れがバレる前年の作品だが、2000年の「秋の童話」で人気急上昇した後の、ちょうど昇り調子の時。茶パツのウェーブがかかった長髪で才能あるアートディレクター役を自信を持って演じ、自信みなぎる若い男独特の甘い魅力をあますところなく発散している。 ソン・イエジンという相手役にも恵まれた。日本では映画「私の頭の中の消しゴム」やヨン様との共演「4月の雪」で知られているが、嫌いで別れたわけではない元夫婦の微妙な心象風景を描いたドラマ「恋愛時代」など、関係性の言葉にできない行間感覚をコミカルさをまじえて絶妙に演じている。 「夏の香り」はドラマのストーリー自体はつまらない。簡単に言ってしまうと、亡き恋人の心臓を移植した相手にビビッと来てしまい、相手もまた同様、あら不思議、というお話。けれど、ちょうど昇り調子の二人の役者の表情を追っているだけでもおもしろい。 ストーリーがリゾート開発に関わるもので、主人公の二人もそのスタッフとして参加する(なんだか冬ソナと似ているが、同じユン・ソクホ監督の作品)。 ソン・スンホンのライバルとなる男はホテル経営者の息子なのだが、彼の事務所があるのは『ソウル・プラザ』。ソン・イエジン演じるヒロインが彼と結婚式を挙げたのもここである。 リゾート開発の舞台となった「カラーリゾート」は、茂朱リゾート。 主人公の二人が泊まっていたのは、ファミリーホテル。 ライバルの御曹司はより高級なチロルホテル。 ちなみに、フローリスト役のソン・イエジンの花屋とソン・スンホンのオフィスは、ここのショッピングモール「カーニバル・ストリート」にある。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.77より ひと昔前の憧れのホテル 韓流ドラマといえば、交通事故・記憶喪失・不治の病・孤児院の出自・つじつま合わせの留学など、ストーリー展開がワンパターンなドラマが多いのは確かである。 しかし、「宮廷女官チャングムの誓い」に代表される歴史ドラマには秀逸なものも多い。 そしてもうひとつ。設定は地味ながら観ているうちにいつのまにか深く引きこまれてしまうのが、長編の家族ドラマである。 そのひとつが、1997年に放映され視聴率が今でも歴代トップ10という「あなた、そして私」。 メインストーリーのテーマは格差婚である。地方の漁村の落ちぶれた船乗りの長男に生まれたが、成績優秀でソウルの大学を卒業後、PR会社につとめる主人公の男性。なんとなく村上春樹に似た風貌のパク・サンウォンが演じている。 彼の妻となるのは"バリバリ男と肩を並べて仕事をしたい"(当時はまだそういう言い方をしたものだった…)と強く願う会社の同僚で、ソウルの生まれ育ち、財閥企業の取締役までつとめあげた裕福な親の下、何不自由なく育った女性。 この気が強くてお嬢さん育ちの妻役を演じているのが、チェ・ジンシル。名実共に韓国のトップ女優として活躍してきたが、昨年、自ら命を絶った。その理由がネット上での誹謗中傷を苦にしてだったため、韓国では法律を変えるほどの大ニュースになった。 さて、紆余曲折の末に、なんとか結婚までこぎつけた二人が新婚旅行に訪れるのは、ソウルから車で3時間ほど南に下った徳有山国立公園内にある茂朱(ムジュ)リゾート。220万坪の敷地には3軒のタイプが異なるホテルのほか、スキー場、ゴルフコース、トレッキングコースなどがあり、建物はすべてオーストリア風という、テーマパーク的リゾート。 ハネムーンをすごす二人が泊まるのは、一番高級なホテルチロルホテルのスイートルーム。建材はオーストリアから持って来て作ったそうで、ときどき「春のワルツ」など他のドラマでもオーストリアのシーンで使われている。 主人公の二人の物語は、格差婚ということから当然予想される展開なのだが、韓国ドラマの常で、サブストーリーの数々がめっぽうおもしろい。 貴公子的な風貌で知られ、アメリカの大学を卒業した後ニューヨークでの会社勤めも経験、趣味は株の売買という異色俳優のチャ・インピョンが、優秀な兄にコンプレックスを抱く遊び人の次男役を好演。IQは高いものの努力嫌いで、功利主義風を装ってはいるが、実は根は繊細で優しい。 お宝映像ともいえるのが、デビューしたてでまだ少年の面影を残すソン・スンホン。今や押しも押されぬトップスターだが、いじけた甘えん坊の末ッ子役を演じている。 「教授」と呼ばれてはいるけれど実態はカルチャーセンターあたりの講師をやっているウーマンリブ(これももう死語だ)を掲げる独身中年女性の恋の物語が、これから後、現在に至るまで韓国の女性がかかえている悩みを映しだしている。 韓国ドラマの常で、大いに言い合い、大いにいがみあった後で、雨降って地固まる。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.76より 立身出世物語の舞台になったホテル ホテルシーンが出てくる韓国ドラマについて書いてきたが、これを抜かすことは絶対にできないというのが、2003年に放映されて大ヒットした「オール・イン」。 全財産18ドルを懐に渡米し、ラスベガスで体を張って勝負して億万長者になった実在の韓国人ギャンブラーをモデルにしたドラマで、ホテル王の座とひとりの女を巡っての男の闘いが描かれている。 ストーリーは、子供時代、身分の差がありながらも熱い友情で結ばれていた貧しい少年Aと金持ち少年Bが、大人になってからはビジネスと女性を間にはさんで対決することになり、かつての深い友情ゆえに、その関係がより複雑にこじれるという、ドラマや映画によくありがちなパターン。 貧しい方の少年Aが伝説のギャンブラーに成長して故郷に錦を飾りに戻り、金持ち息子の少年Bは、地元財閥でホテル&カジノ経営者の後継ぎ息子としてこれを迎え撃つ。 イ・ビョンホンが主役のギャンブラーを演じ、若手ではトップ女優のソン・ヘギョと愛を誓い合うのだが、実はこのふたり、ドラマ撮影当時は実際にも恋人どうしだったが、後に別れたそうだ。 ドラマの舞台となるのは、韓国における沖縄的存在であるビーチリゾート、済州島。韓国を代表する大財閥サムスン・グループのホテルで、同地ではトップホテルの済州新羅ホテルがイ・ビョンホン演じる伝説のギャンブラーが買収する「漢拏(ハルラ)ホテル」として登場する。 ホテルで最高の部屋として叔父を招待するシーンで使われているのは、「新羅スイート」。オフィスとして使われているのは、7階の「プレジデンシャル・スイート」。 海を望む部屋のバルコニーにお客を招待してのカクテルパーティーのシーンがあるが、なぜか韓国ドラマでは金持ちのライフスタイルを象徴するシーンとして、ガーデンやバルコニーなど、屋外パーティーシーンがとても多い。 もっとも、一般家庭でも屋外の縁台で食事をしたり、語らったりするシーンをよく見かけるので、単に屋外で過ごすのが好きなのかもしれない。 イ・ビョンホンとソン・ヘギョのラブシーンで登場するオランダ風の風車があるホテルは、ロッテホテル。 チ・ソン演じるかつての金持ち息子の少年Bが経営する「シー・ワールド・ホテル」の舞台になっているのはハイアットリージェンシー済州。ロビーラウンジのほか、11階のプレジデンシャル・スイートが使われている。 この他、韓国の初代大統領・李承晩の別荘地に建てられた地中海風のパラダイス・ホテルの韓式レストランがチ・ソンのお見合いシーンで登場する。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.75より 親世代はシェラトン、若者はW 2006年に放映された、テレビドラマ「春のワルツ」。なにしろ冬ソナの監督が作ったので、韓流ドラマの本道をまっしぐらに行く「ありえない!」と叫びたくなるようなドラマチックな設定である。 亡くなった子の身代わりになってくれと乞われて、幼い時に入れ替わって別人の人生を送ることになったピアニストの男性が主人公。成長した後、幼なじみで初恋の女の子と「偶然に」出会い、ふたりは何も知らずに恋に落ちる…。 多くのシーンの舞台として使われているのは、ソウルのウォーカーヒルにある2軒のホテル。共にスターウッド系のシェラトン・グランデ・ウォーカーヒルとWソウルである。 韓国の大財閥SKグループが所有しているホテルで、こうしたテレビドラマや映画の取材には大変協力的なホテルのようで、よく見かける。これまではどちらか一方のホテルを舞台にしたドラマは多かったが、2軒のホテルが同時に舞台になるのは珍しい。 大きく分けて、主人公ら若者組が泊まっているのはトレンディーなWソウルの方で、主人公の両親たちシニア組が泊まっているのは落ち着いた雰囲気のシェラトンの方。 ちなみにこのシェラトンは、韓国ではけっこう格が高く、有名女優のシム・ウナが財閥一族の大学教授と結婚式をあげたのもここである。 さて、両親の部屋はシェラトンの17階にあるクラブダイヤモンドスイート、1700号室。 外交官で大臣の呼び声も高い韓国エスタブリッシュメント族の父親にはシェラトンの背景の方がぴったりくるせいか、両親を交えての食事のシーンはシェラトンの方のレストランが舞台になっている。 やはり韓国エスタブリッシュメント族で両親のお気に入りのフィアンセ候補の女性が好きなのは、シェラトンのイタリアンレストラン「デビルノ」。 主人公とマネージャーの若者組はWソウルにご滞在。赤や青のベッドカバーがかかった丸型のベッドがトレードマークのメディアルームが登場する。 マネージャーの男性が朝トレーニングしているのは「アウェイ・スパ」のフィットネスルーム。 主人公とマネージャーが語り合う場で使われているのはシェラトンのバー「シロッコ」だが、男どうしの語り合いの場にはWソウルの「Woo Bar」はちょっと合わないだろうな、と思う。 話はちょっとそれるが、いつも韓国ドラマを観ていて驚くのが、エスタブリッシュメント族の庶民に対する横柄な態度や横暴がけっこう許されていること。日本に比べてクラス間格差が大きく、エスタブリッシュメント族の支配力が強力なせいなのだろうか。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.74より 恋人の妻と対決するホテル こんなドラマが韓国で作られていたとはちょっと驚きだったのが、2007年に放送された「不良カップル」。 キャリアウーマンが結婚はしたくないけれど、子どもだけは欲しいと、優秀な遺伝子を持つ男性を狙うという、男性方にとってはコワイお話。 主人公は有名女性ファッション誌の編集長。「ゴールドミス」と呼ばれる、お金も地位も手にした未婚の31才女性。 恵まれない家庭の育ちながらも苦労して今の地位まで昇りつめたのは、彼女いわく「なみなみならぬ努力によるもの」。目的のためには美貌も金も知恵も自分が持てるものすべてを動員し、権謀術策を駆使するタイプ。もっとも、その結果は良く出ても悪く出ても、すべて甘んじて受け入れる潔さをもつ女性でもある。 彼女と対照的な存在として描かれているのが、医者の夫を持つ専業主婦の友人。彼女の夫の不倫による離婚問題もサブストーリーとして進行する。 こちらは「とても一人では生きて行けないわ」と言っていた世間知らずの箱入り妻が、若い恋人を得てすっかり自信を持ち、自立していく物語。 ちなみに、医者夫の恋人(女医)も「奥さんと別れて!」と一時はかなりしつこく迫っていたが、最後は男を見切ってあっさり捨て、人生を仕切り直す。 さて、メインストーリー。優秀な遺伝子の持ち主として主人公に狙われたのは、韓国大学の高名な植物学教授で、ルックスは「俳優にしたいくらい」、人柄も家柄もいい男性である。 子種を頂戴しようと、あの手、この手で繰り出される主人公の手練手管に必死に抵抗するものの、しまいには媚薬まで盛られ、あえなく陥落。主人公に子種をささげることになる。 ドラマでは、もうひとつの女性の生き方が描かれる。旧家の跡取りである彼に嫁ぐのが幼い頃からの夢という彼の幼なじみの許嫁で、韓服が似合い、伝統琴も得意という、一見古風なタイプの女性なのだが、考古学の勉強のためエジプトに留学したりして、現在は地元の博物館に勤めている。 非常に優秀で、ソウルでの仕事も誘われたけれど、旧家に嫁ぐ覚悟で断ったという。仕事よりも結婚を優先する女性であったが、かなわぬ恋を悟り、自ら身を引き、再びエジプトへと旅立つ。 煮え切らずにグダグダ迷う男たちに対して、女性たちがみな潔く描かれているあたりに、韓国の現状(女性たちの願望?)をかいま見せる。ラブコメディーだが、終盤の展開には泣かせどころもある。 医者夫の恋人である女医が妻を呼び出して対決するシーンはグランドヒルトン・ソウル。医者夫がセミナーと妻には偽って恋人と海辺のリゾートホテルに出かけるのだが、これはどこなのだろうか? 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.73より 「ワル」が似合うホテル カンヌ映画祭で主演女優賞をとったチョン・ドヨン。日本ではあまり人気がないようだが、かのヨン様が主演した映画「スキャンダル」ではラブシーンの相手役を演じた、韓国では代表的な演技派女優のひとりである。彼女がヒロインを演じて話題になったテレビドラマが「プラハの恋人」。 韓国では従来、映画俳優の方がテレビドラマに出演する俳優よりも格が上で、テレビ出身者が映画に出るのは出世と考えられている。一方、映画俳優がテレビドラマに出演することはあまりなかった。しかし、ここ数年、韓流ドラマブームもあって、映画俳優たちがテレビドラマに登場する機会も増えた。 「プラハの恋人」でチョン・ドヨンの相手役を演じている男優も、映画を主たる舞台として活躍している演技派のひとり。日本では人気は出ないだろうなぁと思われるタイプであるが、韓国人女性には好かれるタイプの男性である。 さて、ドラマのストーリーだが、バリバリのキャリア外交官で大統領の娘でもあるヒロインが恋に落ちたのは、恋人に貢いで捨てられた純情で熱血漢のヒラ刑事。ヒロインは彼に大統領の娘であることを隠している。 この二人にからんで三角関係をつくるのが、大統領の対抗勢力の中心的存在である大財閥のオーナーの息子で、こちらはキャリア検事。 ドラマは、韓国ドラマお得意のパターンである「身分の差」恋愛、腹違いの兄弟もからむ複雑な家族関係、父と息子の愛憎に満ちた葛藤などをベースに、プラハの観光要素も織り交ぜたもの。 ドロドロものになりそうな要素がたっぷり盛りこまれているにも関わらず、ヒロインは良い意味でのお嬢さん育ちで、根っから明るく楽天的かつ脳天気。相手の刑事も無骨で荒っぽいものの洒脱な性格なので、ふたりの軽妙なセリフのやりとりも多く、軽いタッチの仕上がりになっている。 大財閥のオーナー役は、「冬のソナタ」でパク・ヨンハの父親として大学の数学教授を演じていた俳優だが、今回は悪役。その彼が所有しているホテルということでしばしば登場するのが、ソウルの江南にあるインペリアル・パレス。 撮影に協力的なのか、ドラマ「宮」をはじめ韓国ドラマにはよく登場するホテルである。ヨーロピアンクラシック風の荘重な雰囲気が、大財閥オーナーが「ワル」として凄みをきかせるセリフを放つ時など、しっくり似合うホテルである。 ホテルとしてロビーやレセプション、廊下、レストラン、スイートルームが使われているほか、外務省が主催する会議やレセプションの舞台など、かなり多くのシーンがこのホテルで撮影されているようだ。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.72より 金持ちはホテルオーナー 日本の作家・野沢尚の小説「恋愛時代」を原作に忠実にドラマ化したものだが、視聴者の反応を見ながら当初予定していたストーリーをどんどん変えていくのが常識の韓国では珍しいことだそうだ。 難病、記憶喪失、孤児、身分の差など、韓国ドラマでは定番の設定もなく、何か事件が起こるわけでもない。若い夫婦の離婚後の微妙な関係を淡々と描いたものである。 二人の離婚のきっかけは子どもの死産で、妻はその時の夫の対応が許せなかった…。こう書くとなんとなくシリアスなドラマに思われるが、軽妙でコミカルなタッチで描いているので、笑いころげることもしばしば。 元夫(カム・ウソン)は、ソウルの大型書店でチーフを勤めている、ちょっとインテリ志向のあるサラリーマン。おっちょこちょいで部下からはおちょくられながらも慕われている。 カム・ウソンは、韓国の東大、ソウル大卒で、とりわけ学歴を重んじる韓国においては「韓国で最も知的な俳優」としてとりあげられることが多い。 一方、清楚で可憐な見かけとは裏腹に、元夫に対する毒舌が冴え渡る元妻(ソン・イエジン)は、家族にすら泣き顔を見せたことがないスポーツジムのインストラクターだが、人知れず心に深い傷を負っている。 好演しているソン・イエジンは、映画「春の雪」でヨン様とも共演した、韓国の若手ではトップを走る演技派のひとり。 物語は、別れた後のふたりの日常を、元夫の幼なじみの産婦人科医の男性と、元妻の少々すっとんきょうだが姉思いの妹との恋愛もからませながら、コミカルに進行する。 おもしろいのは、別れたふたりが出遭う日常シーンでの会話。お互い、毒舌を尽くしながらもその裏に本音を隠して相手をそっと思いやるのだ。 なんとなく関係が落ち着き、このまま行くと元の鞘に収まるかも…と思わせた二人の関係に波紋を起したのは、元妻に恋した年下の男。 かつてふたりが結婚式を挙げた翌朝、元妻と偶然に出遭って以来、元妻に憧れていたというこの男、ホテルの宴会場に勤めているのだが、勤務中のヘアスタイルがオールバック。オフの時とは別人になってしまっているのがなんだかおかしいが、この姿はまさにホテルマンそのもの。 この男、ふだんはいかにも金がない若者風で、元妻の妹には「貧乏くさい」とばっさり切られているのだが、実は勤務先のホテルのオーナー社長の御曹司で、跡取り息子なのである。金持ちはホテルのオーナーというのが、韓国の常識のよう。 結婚式のプレイバックシーンで登場するロビーをはじめ、年下の男が勤める宴会場の舞台になっているのは、江南のグランドインターコンチネンタル・ソウル。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.71より 女詐欺師に似合うホテル イ・ダヘという女優さんを初めて見たのは、「グリーンローズ」(2005年放映)という韓国ドラマだった。きりりと整った上品な顔立ち、清楚できれいな人だなぁというのが第一印象。 落ち着いて知的な雰囲気も併せ持つ、韓国の若手女優の中でも美人の誉れ高い女優さんのひとりなのだが、ドラマで演じた財閥の跡取り娘役がぴったりはまっていた。病に倒れた財閥会長の父の座をビジネスウーマンとしてしっかり守る一方で、殺人犯の濡れ衣を着せられた恋人をひたすら信じて待ちつづける、純粋で芯が強い女性を好演した。 が、ほとんど同じ頃に撮影されたと思われる今回の「マイガール」(2005年末?2006年放映)では、がらりと違う役を演じ、別人と化した。 ストーリーは、詐欺師の父の下で必然的にたくましく育ち、嘘をつくのも平気の平左、とことん図々しく厚かましい、けれどなぜか憎めないところがある詐欺師役の娘が、ホテルオーナーの財閥の跡取り息子と恋に落ちるというもの。何から何までまったく逆のキャラクターの設定で、コミカルな役どころ。 韓国の女優さんの場合、イメージの固定化を嫌うのか、あるいは演技力を見せるためか、ドラマごとにがらりと違う役を演じることが多い。 つい最近、ネット中傷が原因で自殺し、同国の法律を変えるほどの大きな話題になったトップ女優のチェ・ジェンシルも、ドラマごとにまったく違うキャラクターを演じてみせたものだった。 イ・ダヘもまだ24才ながら、この人、いったいどっちが本性なんだろうと思わせる熱演ぶり。 図々しい詐欺師の娘に最初は嫌悪感を抱くものの、次第に心を惹かれて恋に落ちていくという、韓国ドラマお決まりコースの恋人役の設定は、ホテルの社長。これもまた韓国ドラマにはやたらと多いパターンであるが、冷徹なビジネスマンでクールな性格。 舞台は、韓国人にとっての沖縄的存在である南国の済州島だが、撮影に使われたのはロッテホテル済州。 高級路線の済州新羅ホテルに比べるとグレイドは下だが、わかりやすい南国のリゾートホテル風。 もっとも、主なロケ地として使われたのは、ソウルの蚕室駅にあるロッテホテル・ワールドである。ヒーローの所有するものの大きさをことさら誇示するような白亜のどーんとした大型ホテルである。主人公たちがビリヤードをしたりするシーンは同ホテルの「Mega CC」で撮られた。 ちなみにこのドラマは、映画「王の男」で一躍スターダムにのしあがったイ・ジュンギがドラマ・デビューした作品でもある。これまた映画とはまったく異なるキャラクターを演じている。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.70より プレイボーイが使うホテル 韓国ドラマのキーワードとして欠かせないもののひとつが「財閥」。王室を持たないアメリカが、大統領ファミリーをロイヤルファミリーのごとく扱うのと同じように、皇室のない韓国にとって、トップクラスの大財閥のファミリーメンバーの動向は常に人々の関心の的になっている。有名女優や人気女子アナなども財閥一族に嫁ぐことが多く、こうしたケースは「玉の輿」扱いされる。 そんな財閥でも、韓国一の大財閥(イメージとしてはサムソンでしょうね、きっと)会長の孫娘が主人公のテレビドラマが、2005年に韓国で放映された「ルル姫」。 ヒロインを演じるのは、大ヒットしたドラマ「パリの恋人」で貧しい庶民役を演じた、キム・ジョンウン。今回はまったく逆で、どこか浮き世離れしている世間知らずの深窓の令嬢を演じている。 彼女の祖父役は、こうした財閥ものドラマではたいてい大財閥(ふつうの財閥ではないトップクラス)の会長役を演じているベテランの俳優さん。位置づけもなんとなく「韓国の山村聡」といった感じだ。冬ソナのチェ・ジウがお嬢様役ヒロインを演じた「新貴公子」でも大財閥の会長役を演じていた。 さて、物語は、夢見るお姫様のようなヒロインが、韓国一の凄腕プレイボーイと恋に落ちるというラブコメディー。もっともプレイボーイといっても、ヒロインが属する大財閥に比べれば格下ではあるものの、いちおうそこそこの建設会社の御曹司である。 このドラマの第一回目の舞台として登場するホテルは、Wソウル・ウォーカーヒル。 ほとんどこのホテルのプロモーション・ビデオのように、エントランス・シーンに始まり、ロビー、レセプション、客室廊下、客室、2軒のレストラン、とほぼ全館登場。ヒロインがケーキ作りの講習を受けているのは、レストラン「キッチン」。 最初にプレイボーイが逢い引きで使っている部屋は、赤い丸ベッドがトレードマークのスタジオスイート(旧名・メディアルーム)。ドラマでは1071号室、1072号室とルームナンバーまで出てくるが、一部のシーンでは別のタイプの部屋が使われているようだ。 プレイボーイがひとりたたずむ後ろ姿のシーンで出てくる木の枝のオブジェが印象的な部屋は、エクストリーム WOW スイート。ヨン様が同ホテル滞在時に泊まった部屋でもある。 財閥二世のお坊っちゃまたちが個室でとぐろを巻いているバーは、Wソウルのお隣に建つ同じスターウッド系シェラトン・グランデ・ウォーカーヒルにあるバー「シロッコ」。ヨン様が主演したドラマ「ホテリアー」でも何度となく登場したバーである。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.69より 架空の韓国皇室が使うホテル もし、韓国にも皇室があったら…。そんな架空の設定のドラマが、2006年に韓国で放映されて大ヒットした「宮?Love in Palace」。 借金取りに追われながらも賑やかに家族仲良く暮らす庶民の家庭に育ったふつうの女子高生が、祖父が先代の皇帝と交わした約束のため、同じ芸術高校に通う皇太子に嫁ぐことになる…。 いわゆるシンデレラストーリーのドラマだが、この皇太子妃、規則を無視して制服の下にジャージをはいて登校しては、毎日、先生に追っかけられるようなイマドキのお茶目な女子高生。形式と伝統を重んじる皇室などという堅苦しい世界に身を置かれれば、ひとり浮いた存在となるのは予想がつく。 物語は、そんな規格はずれなヒロインの言動に、最初は嫌悪感をむきだしにし、徹底して冷たい態度をとっていた皇太子が、自分でも気づかぬうちに彼女のまっすぐな気持ちと純粋さに心惹かれていくという展開。 皇太子役は、モデル出身でドラマ出演は初めてというチュ・ジフン。身長187cm、細身の長身。黒髪につり上がった一重まぶたの純オリエンタル顔。足が長くスタイルが良いのはもちろんのことだが、気障なドレスシャツもさらりと着こなす。 この二人にからむのが、皇位継承権第二位でヒロインを横恋慕する皇太子のいとこ。ロンドン育ちの帰国子女で、ヒロインと同じクラスに編入してきた。皇太子が心を決して表に出さず冷たい印象なのに対して、こちらは当たりもマイルドで、目に見えるような心配りとやさしさをストレートに表す。茶髪で目はぱっちり、甘いファニーフェイスで洋風味。 つまり、ヒロインは二人のタイプが異なるプリンスに愛されてしまうという、女子にとっては夢の展開である。 このドラマでもしホテルが出てくるとしたら、きっとココしかないだろう…そう思って観ていたら、案の定、登場したのは江南にある、その名もインペリアル・パレス。 なんとか息子(洋風味の方)に皇位を継がせようと悪だぐみをする前皇太子妃がその片棒をかつぐ新聞記者と車に乗りこむシーンで、エントランスの回転ドアがよく出てくる。皇太子のタイ訪問でチャオプラヤ河に面したサーラのシーンはオリエンタルのテラス。 二人が同房する通称「4回目の相部屋」シーンで登場するのは、ソウル郊外、楊平にあるデザイナーズ系ホテルのハウス・オブ・ザ・マインド House of the mind。モダン建築好きには一見の価値あるホテルである。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.68より 庶民たちのリゾートホテル 韓国にはいわゆるエリート教育のシステムがあって、理数系に秀でた子供たちが集まるのはソウルの科学高校。「冬のソナタ」でヨン様演じる数学が得意な主人公ジュンサンが転校前にソウルで通っていたのもここ。テレビドラマ「雪の女王」は、この科学高校に通う二人の男子生徒の友情から始まる。 一人はサラ金から財を成した新興金持ちの息子で、幼い頃から抜きんでた秀才として有名だった少年。そして、もう一人がヨン様らの次世代韓流スターとして人気のヒョンビン演じる、貧しい母子家庭に生まれ育ったけれど、数学には天才的な才能を持つ少年。最初は金持ち秀才少年の方が反発したものの、紆余曲折を経て二人は大親友になる。 ところが、数学オリンピックという、少年たちの数学の才能を競い合う大会で、巷の予想を裏切り、貧乏の天才少年が金持ちの秀才少年を破って一番になってしまう。息子に自分の果たせなかった夢を託す父親の期待に添えなかったこと、初めて味わった挫折に耐えられず、金持ち秀才少年は自殺してしまうのだ。 この件で、誰よりもいちばん深く傷を負い人生を狂わされたのが、貧乏の天才少年(以後、ヒョンビン)だった。自分が一番になったせいで、そして、最後に交わした会話で売り言葉に買い言葉でつい口走ってしまった暴言のせいで親友が自殺したと思いこみ、彼は高校を辞め、母親にも何も言わずに黙って家を出て、名前を変えてボクシングジムに入る。 そして、運命のいたずらで…というより、ドラマなのでそういう展開になるのだが、ヒョンビンは自殺した金持ち秀才少年の妹と偶然知り合い、お互いが誰だか知らぬまま愛し合うようになる、というお話である。 超ワガママ娘に育った金持ち秀才少年の妹が、財閥ジュニアら金持ちの道楽息子たちと遊ぶホテルとして舞台になっているのはグランドハイアット・ソウル。ここで金持ち娘は、出自がサラ金の成金ということや留学してないから英語も話せないなど、他の財閥ジュニアたちからさんざんバカにされる。金持ちの世界にも、それなりの差別やいじめがあるものだ。 一方、ヒョンビンが属するボクシングジムの貧乏仲間の世界はシンプルで、リングを降りればお互いに仲間。そんな気のおけない彼らと主人公たちがスキー旅行に出かけるのは、江原道にある現代財閥が開発したヒョンデソンウ(現代星宇)・リゾート。ソウルからは高速で1時間半ほどで、コンドミニアムやユースホステルがある庶民たちのためのスキーリゾートである。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.67より 財閥企業のエリートたち 徴兵制がある韓国では、男子は基本的に29才になるまでに2年強の兵役につくのが義務となっているため、人生のどこに組みこむかが大きなテーマとなっている。大学に入学してすぐ、あるいは在学中に中抜けして入隊し、就職前には兵役を終えておくケースが多いが、人気商売の俳優や歌手などの場合はたいへんだ。 人気絶頂期、あるいは長い苦節の末ようやく芽が出たところでの2年間のブランクは大きい。兵役で心身ともに鍛えられ、たくましくなって戻ってくる人もいれば、売り時を逃して忘れられてしまう人もいる。そこで、日本でも大きな話題になったソン・スンホンなどのように兵役逃れ問題が起きる。 昨年、年齢リミットぎりぎりで入隊したチソンなど76年生まれ組の俳優たちが兵役を終え、続々とカムバックしたが、今年は入替えに79年生まれ組が入隊予定だ。今年注目されている一人が、神話(シンファ)という韓国を代表するアイドルグループのリーダー、エリックの入隊。 幼少から高校を卒業するまでアメリカで育った帰国子女だが、韓国ではスーパースター的存在。ここ数年は歌だけではなく俳優活動にも力を入れており、出演したドラマ「火の鳥」では切ない男心を、「新入社員」では落ちこぼれだが規格外の魅力を持つさわやかな青年を演じて大好評だっただけに、今この時期の入隊を惜しむ声が多い。 「新入社員」で、財閥企業サムスンをモデルにしたような超エリート財閥LKグループに採点ミスのため「満点」でトップ入社してしまった新入社員役のエリックが、新入社員研修を受けた系列のホテルとして登場するのが、メイフィールド・ホテル。 ドラマでもなんとなく郊外っぽい雰囲気が漂っているが、金甫空港から車で10分ほど、ソウル市街から離れた郊外にあるホテル。約三千坪ある広い敷地の庭はランニングシーンで、敷地内にあるレストランはセミナーシーンで、キャノピー付き豪華ベッドがあるスイートルーム「James II」はエリックがホテルの会長の娘でもある同僚の女子社員と酔っ払って泊まってしまう部屋のシーンや企業スパイの欧米人が滞在しているシーンなどで登場する。 能力はあるものの高卒のため契約社員すらリストラされたエリックの恋人の女子社員役は最近人気上昇中のハン・ガインが演じている。 ドラマで特に興味深かったのは、韓国のエリート企業の入社試験の大変さとそうした企業が社員に求める英語力のレベルの高さ。韓国のグローバル企業の躍進ぶりの理由がよくわかるドラマでもある。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.66より ホテル御曹司がNYで泊まるホテル 「私の名前はキム・サムスン」という、韓国で05年に大ヒットしたテレビドラマがある。主演しているのはヒョンビン。ヨン様らの次世代をになう人気男優のひとりで、笑うとキュートなエクボが出るのが年上の女性たちの心をいたくくすぐっているようだ。 ドラマの中の配役もそれを実践するもので、生意気でつっぱっていたはずが、いつのまにかこうるさい年上の女性に惚れてしまう年下の男役。もちろん、韓流ドラマおきまりで、財閥の跡取り息子。母はホテル経営者。家柄もよく金に不自由せず、ハンサム。現在は系列のフレンチレストランの経営を任されている。 そして、この自信満々オトコを手に入れた女というのが、美人でも金持ちでもなんでもない、嫁きおくれた三十女のサムスン。パティシエとしての腕は確かだが、気が強くて、ぽっちゃりというより、かなり太め。三段腹なので「密室でのおつきあいはダイエットするまで延期!」宣言するほど。これを演じるキム・ソナは役作りのために6キロ太ったそうだが、身長が170センチもあるだけに、「おい、コラッ!」「てめぇ!」など乱暴な言葉使いでヒョンビンを手荒く扱ったりするときにはものすごいド迫力。 彼ら二人の共通点は、自分の恋には臆病で自信が持てないこと。共に過去に恋に失敗した傷を持ち、昔の恋人を忘れられない。けれど、なりゆきでふたり一緒の時間を過ごすうちに、次第にひかれ合っていく。 韓国で放映中にも人気を呼んだのが、キム・ソナ演じるサムスンの、酸いも甘いも経験してきた三十路女ならではの小気味いいセリフの連発。ヒョンビンの元カノ(若くて美人)に「彼を返していただけませんか?」と迫られれば、真顔で「じゃあ、二つに分けましょうか?」。女はだてには年は取らないのだ。 最初の出会いの舞台にもなり、ヒョンビン母が経営するホテルはラディソン・プラザ・ホテル。 ドラマの最後の方で、母親のホテルを継ぐ決心をしたヒョンビンが旅先のアメリカからソウルで待つサムスンに絵葉書を出す。ニューヨークからの一枚には、「今日はブロードウェイのグランド・ハイアットに泊まっている。今までで一番値段が高いホテルだが勉強になる。夜景がすばらしい。サムスン、君と来たかった、会いたい…」。 グランド・ハイアットは、グランド・ハイアット・ソウルの格の高さのおかげで、韓国では最高級ホテルブランドとして知られているのである。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.65より 韓国ホテル創生期がわかるドラマ 十年前のヨン様が見られるのがドラマ「初恋」。チェ・ジウとの初共演作としても知られているが、スタート時には準主役だったのが、次第に主役を完全に食ってしまう成長ぶりを見せる。眼鏡ナシの短い黒髪で、まだまだ粗削りだけれど、どこか不敵な冷たさと優しさというヨン様ファンにはたまらない魅力が楽しめる役柄だ。 物語は、ヨン様演じる弟の初恋の相手が愛したのは兄だったというストーリーだが、兄弟が恋人を奪い合うドロドロ劇にはならず、弟はひとり心の内に恋心をおさめたまま、ひたすら兄のために献身しつづける美しい兄弟愛と家族の物語。 兄弟が愛した女性は、春川(チュンチョン、「冬のソナタ」の舞台でもある)で映画館を経営する地元の有力資産家のひとり娘で、彼女の父親は後にソウルに出てきて一旗上げる。貧しいけれど清く正しいヨン様一家に対して、この女性の家族というのがほとんどヤクザまがい。兄弟たちは何度も暴力で脅され、叩きのめされ、命までも狙われるはめになる。 もっとも、この家族が昔から頼りにして、密接な関わりを持っているのがソウルの名門財閥ファミリーで、チェ・ジウ演じるいかにも育ちのいいお嬢さん風はここの娘。有力政治家の父と財閥の跡取り娘でやり手女実業家の母のもと、のびのびと育った正義感あふれる娘なのだが、彼女が恋したのは当時のソウルでは極貧ともいえる家庭に育ったヨン様。ヨン様は明晰な頭脳に恵まれ、家庭教師をしたり、カジノでバイトしたり、苦学しながらソウル大学の法学部で司法試験を目ざす。 そして、ヨン様初恋の女性の父がソウルで経営するようになったのが、ホテルである。 ドラマは、70年代後半の朴大統領のもと韓国が「漢江の奇蹟」と言われる経済急成長をとげた時代から80年代の設定で、実業家の間ではこれから観光産業は伸びるという時流の読みがあった頃だ。 チェ・ジウの母も外国人向けにカジノを経営しており、ここでヨン様がバイトをしたのをきっかけにその実力と胆力を認められる。済州島のカジノ&リゾート開発話なども出てきたりして、ドラマとはいえ、こういう人たちが礎を築いたのかと韓国のホテル産業創生期の成り立ちがわかっておもしろい。 映画でも現在の韓国を代表するサムスン財閥とヒュンダイ(現代)財閥の創立者二人の成り上がり物語が話題になっているようだが、成功を果たしてからのエスタブリッシュメントたちの物語よりも、こうした戦乱期の野性味あふれる物語の方が個人的にはおもしろい。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.64より 済州島のホテル選びに役立つドラマ ソン・ヘギョという若手で人気の女優さんがいる。イ・ビョンホンの元恋人としても知られているが、最近では韓国を代表する実力派女優のひとりで、主演映画『黄真伊』は日本でも近々公開予定である。赤ちゃんのようにきれいな肌と大きな瞳、童顔ながらふくよかな唇、愛くるしい笑顔、つややかな漆黒の長い黒髪が魅力だが、女優にしては小柄でどちらかというとずんぐりむっくり。スタイルは特にいいとはいえない。けれど、どんな端役で出ていたとしても、思わず目を引きつけられるような存在感がある女優さんである。 シットコム・ドラマの「順風産婦人科」では、医者一家の甘ったれの末っ子役で、幼稚園児の姪と真剣に喧嘩してしまうような女子大生役を演じたが、同じ女子大生役でも企業ドラマ「ホテリア」では、舞台となるソウルの名門ホテルの買収をたくらむ企業家のひとり娘役で、娘から女に変わるこの年頃の女性独特の複雑でちょっと小悪魔的な心情を演じてはまり役だった。 このドラマの中でも金持ち娘の気まぐれからホテルのレストランのウェイトレスをするシーンがあるが、ホテルのハウスキーパー役を演じた「秋の童話」と同様、こうしたメイドっぽいユニフォームがよく似合う人だ…そう思っていたら、ドラマ「オールイン」ではシスターとカジノのディーラーという、これまたがらりと変わった姿で登場した。どちらもぴたりと決まって似合っていたのが不思議だ。 この「オールイン」というドラマはイ・ビョンホンとの共演ドラマだが、済州(チェジュ)島の主だったホテルが総出演といった感じでドラマの舞台になっている。 まず、ロッテホテル・チェジュ。ソン・ヘギョ演じるミン・スヨンとイ・ビョンホン演じるキム・イナとの初めての出会いの場の舞台になったのが、このホテルのロビーラウンジだ。 ドラマの中では「シー・ワールド・ホテル」として登場するのが、ハイアットリージェンシー・チェジュ。ロビーの「アイランド・ラウンジ」でキム・イナを忘れられずに酒を飲んで酔っ払ったミン・スヨンがかつぎこまれたのは、執務室として使われたプレジデンシャル・スイート。 韓国の初代大統領である李承晩の別荘地に建てられたパラダイス・ホテルも出てくるが、ホテルそのものではなく、併設の「ハネムーンハウス」という韓定食レストランである。 そして、新羅ホテル系列のチェジュ・シーラ・ホテルは、ドラマでは「ハルラ・ホテル」。キム・イナが買収するホテルである。彼のオフィスとして出てくる広いバルコニー付きの部屋は、7階のプレジデンシャル・スイート。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.63より 役柄に似合うホテル 韓国ドラマの楽しみのひとつは、役者さんたちが毎回まったく前作とは異なったキャラクターで登場することである。いい意味で期待が裏切られておもしろい。 たとえば、チ・ジニという男優がいる。 日本では大人気だったドラマ「チャングムの誓い」でヒロインのチャングムを陰に日向になって支え守りつづけた、キャリアウーマンの恋人の鏡、ミン・ジョンホ様役といった方がわかりやすいだろう。 この役者さんは、ドラマによってまるで別人のように見せる顔を変える。M&Aを絡めたビジネス&ラブロマンス「ジュリエットの男」では頭が切れる精悍な財閥ジュニアの役を演じ、「波乱万丈!ミス・キムの10億作り」というドタバタ・ラブコメディーでは、ちゃらんぽらんな遊び人だけれど心優しい金持ちのドラ息子の役、純愛ドラマの「春の日」では優等生タイプの穏和でまじめな医者役、といった具合だ。最近では崔洋一監督のハードボイルド映画「壽(ス)」にも出演して冷徹な殺し屋の役を演じた。 観ていると、どれもが地に見えてしまうところがこの人の凄いところ。現在 34 才だが2000年に放映された「ジュリエットの男」がデビュー作で、役者としては遅いスタートだが、実はそれまで演技経験はまったくなく、前職はフリーのカメラマンだったそうだ。 「ジュリエットの男」では、自殺した父の後を継いでデパート経営者となったヒロインが債権者から隠れて住むホテルとしてソウルプラザホテルが舞台に使われていたが、引き締まった体にダークスーツを着こなした精悍なチ・ジニはこのホテルのロビーのマスキュランなインテリアにとてもよく似合っていた。 ヒロインをはさんで愛でもビジネスでも対抗するちゃらんぽらんだけれど才気あふれる野生児タイプの男をチャ・テヒョンが演じていたが、彼の役柄がこのホテルでは浮いて見えたのとは対照的だった。 ちなみにここは「冬のソナタ」でペ・ヨンジュン演じる記憶喪失後のクールで敏腕の建築家ミニョンが住まいにしていたホテルでもある。 似合うといえば、「秋の童話」でウォンビン演じるアメリカで絵を学んだプレイボーイのドラ息子が住んでいたデュープレックスのヴィラの明るくポップでモダンな雰囲気も、ドラマの彼の役柄によく似合っていた。 舞台となったのは江原道にあるフェニックス・パーク・ホテルに併設されたゴルフ場内のコンドミニアム。真っ白なインテリアの明るさと軽さは、ソン・ヘギョ演じるホテルのメイド役のヒロインが持つ暗い家庭環境と重い過去をくっきりと浮かびあがらせた。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.62より ハネムーンで泊まるホテル 韓国で2005年に放映された「ウェディング」は、「冬のソナタ」「秋の童話」の作者オ・スヨンの脚本によるテレビドラマで、放映当時、韓国ではずいぶん話題になったそうだ。新婚の夫婦として演じるのはリュシオン(男優)とチャンナラ(女優)。 リュシオンはイ・ビョンホン、チェ・ジウと三角関係を演じた「美しき日々」で日本でも有名だが、先日、日本のプロ野球の始球式で巨人所属の韓国人選手相手にボールを投げた姿を見られた方もいるだろう。 チャンナラは安達裕美似の童顔ながら、韓国のみならず中国本土でも絶大な人気を誇るトップ女優のひとりで歌手でもある。 さて、そんな豪華カップルの二人の設定は、リュシオン演じる夫は地方出身で、決して豊かではないが堅実な家庭で育ったまじめな秀才で、外務省で長官の秘書官をつとめる若手外交官。 一方、チャンナラ演じる妻はといえば、ソウルで建築会社を経営する娘を溺愛する父と「結婚で大事なのはお金よ」というなかなか現実的な母の下で、あふれんばかりの愛情を注がれ、何不自由なく育った裕福なお嬢様。もっとも、性格は素直で表裏がまったくない純粋ないい子。大学ではピアノを専攻したため、コンサートホールで働いているが、別に仕事が好きでもなく、専業主婦になるのが夢だった。 彼女が両親と家族ゴルフを楽しむシーンがよく出てくるが、韓国ではゴルフは金持ちの証でもある。 というわけで、まったくバックグラウンドが異なる二人のカルチャーギャップ&成長物語である。 二人がハネムーンがわりの旅行で訪れる「外国」というのが、日本の宮崎。 妻の母は「やっぱりハネムーンはヨーロッパとかカリブじゃない?」と不満だったが、妻の実家の財力に甘えるのをよしとせず、つつましくとも二人で一から生活を築いて行こうという夫に妻は合わせる。外交官である夫の出張についていくという設定で二人が泊まったホテルは、シーガイアのシェラトン・グランデ・オーシャン・リゾート。部屋はもちろん最高級のスイートルーム。 旅行ガイドのように、日南海岸のモアイ像など周辺の観光名所が次々に舞台として紹介される。日本人の感覚ではハネムーンの行先として宮崎が流行ったのはずいぶん昔のことだが、金浦空港からは直行便が飛んでおり、韓国の富裕層たちにとっては気軽に行けて、かつウォン高のおかげで安くゴルフや温泉が楽しめる最近の人気デスティネーションでもある。 韓国の場合、国内ハネムーンのメッカといえば済州島だったが、最近はウォン高のせいで日本をはじめアジアンリゾーツが人気だそうだ。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.61より 「格」を演出する時のホテル 韓流ドラマのビジネスシーンでは、日本や中国の大企業が財閥企業の取引先としてよく登場する。なぜか日本の会社の名前が「トヤマ」「フクシマ」だったり、課長島耕作から取ったのか「初芝」だったりするが。 こうした大企業のトップがソウルに来る場合、どこのホテルが舞台として使われるのか見ていたところ、宿泊先のホテルとしてよく使われているのがミレニアム・ソウル・ヒルトンのようだ。コ・ス(男優)が主演して話題になったドラマ「グリーンローズ」でもこのホテルが舞台になっていた。 物語は、貧しい育ちながら優秀で財閥企業に入社し、それと知らずにそこの跡取り娘と相思相愛になった主人公が、社内の陰謀に巻き込まれて殺人犯の濡れ衣を着せられるというもの。無実を主張しつづけるが有罪となり、ついに脱走。警察に追いつめられた末、橋から漢江に身を投げて死ぬ…。が、実は、たくましく生き延びて上海に流れ着き、奇遇な運命に操られて、ついには中国人企業家としてソウルを訪れ、濡れ衣を晴らす、というもの。 中国の名門企業のトップである主人公が泊まっているのがミレニアム・ソウル・ヒルトンで、ボディガード付きで正面玄関からさっそうと車に乗りこむ時、背後には見上げるようなホテルの建物が映る、というのが主人公の現在の地位と格を象徴的するシーンだ。 主人公の会社がIR(投資家向け広報)の会場に使っているのも同ホテルの宴会場で、取引を願う企業との面談に使われているのはメゾネットタイプのスイートルーム。 一方、主人公を迎える韓国側の財閥企業が接待するシーンでよく出てくるのは、ホテル新羅の正面玄関。韓国伝統建築の建物越しに高層のホテルのビルが後ろにそびえ建つ。韓国らしさと格の高さを同時に表すかっこうの絵になるようだ。 食事に招待するシーンでも23階にあるヨーロピアン・ダイニング「コンチネンタル」の個室が使われている。死んだ(実は中国人として生きている)主人公を心変わりせずに想い続けている美貌のヒロインを演じるのがイ・ダヘ。跡取り娘である彼女をなんとか篭絡しようと画策する社長が、プロポーズする食事のシーンの場所に使ったのも同じく「コンチネンタル」のホール席。 インターナショナル感&それなりの格の高さを演出するシーンではミレニアム・ソウル・ヒルトンを使い、韓国らしさ&高級感を演出する時にはホテル新羅を使うと、それぞれ使い分けているようでおもしろい。 ちなみに、イ・ドンゴン主演の「ガラスの華」で主人公の日本の保険会社の御曹司が住んでいたのは、同じヒルトンでも西大門のグランド・ヒルトンの方。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.60より ホテルで婚約式はお金持ちの証 韓国のドラマを見ながらいつも気になっていることがある。ほとんどのカップルが結婚式の前に婚約式をやるのである。 新郎はタキシード、新婦はウェディングドレスみたいなドレスを着て、ケーキカットもあれば、指輪交換もあったりして、お食事付き。ほとんどやることは結婚式とおなじなのだ。そして、この婚約式が恋愛ドラマにはとにかくよく登場し、なぜかというかドラマだからと言うべきか、婚約式をやったカップルが無事に結婚に至ることは少ない。「冬のソナタ」でもドタキャンだった。 さて、日本でも人気のクォン・サンウにソ・ジソブ(男優)、そして「イブのすべて」のチェリム(女優)らが共演している「ただいま恋愛中」というドラマがある。ソ・ジソブとチェリムの恋愛を追う物語なのだが、これと併行して、チェリムの軟派系の弟役で登場しているクォン・サンウが金持ちの家のインテリ娘と恋に落ちるサブストーリーがあり、実はこっちの方がずっとおもしろい。 この金持ち娘の母役というのが、悲恋ドラマ「秋の童話」でソン・ヘギョ演じるヒロインの可憐で病弱な育ての母役を演じた女優さんなのだが、こちらではがらりと一転、えらく気が強い女医役。一見、いかにもいいとこの奥様風なのだが、ひとり娘を吊り合わない家柄のバカ息子(クォン・サンウ)なんかには嫁にはやるまじと激しく闘っていくうちにだんだん凄みを増していく。しまいには「てめぇ!出てけっ!」と啖呵を切り、穏和な夫に「お、お前、そんなヤクザの女房みたいな言い方をして…」とオロオロされる始末。 最後はしぶしぶ結婚を許はめになるのだが、その後も婿の母親とのバトルがすさまじい。タクシーの運転手をして一家の家計を支えている婿の母親というのが甲乙つけがたい良い勝負の気の強さ。二人の舌戦の中でこんなシーンがある。 婚約式の場所はどこにするかというテーマで言い争っていた時に、「公民館かどこか」というタクシー母に対して、「ホテル!」と言い放つ医者母。 やはりチェリムが主演していたドラマ「あの青い草原の向こうで」でも、同じ様な貧富カップルの母親同士の激しい闘いがあったが、この時もチェリム演じる娘の金持ち母が「婚約式は当然ホテルでやるものよ!」と言い張って譲らなかった。 このチェリム、童顔の愛くるしい笑顔が韓国のみならず中国でも大人気の女優なのだが、三年前に十四才年上の歌手、李スンファンと結婚して大いに話題になった。今年になって離婚し、またまた話題になったが、この二人が千人の出席者の豪華なガーデン・ウェディングをしたのは、ホテル新羅の迎賓館の中庭。その夜はプレジデンシャルスイートで一泊したそうだ。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.59より 財閥ジュニアの恋に似合うホテル 日本でもタレント活動をしている韓国人タレントのユンソナが、韓国人の実業家との結婚式の場所に選んだのはホテル新羅だったが、大財閥のひとつである現代グループの御曹司がテレビ局の人気女子アナと結婚式を挙げたのはグランドハイアット・ソウル。 一方、ハンサム系ではないけれどユニークなキャラクターで人気の俳優チャ・テヒョンの場合はトレンディーなWソウル・ウォーカーヒル。 同じウォーカーヒルのホテルでも、清純派の美人女優として知られたシム・ウナが引退して大学教授との結婚式を挙げたのはシェラトン・グランデ・ウォーカーヒル。人生の晴れ舞台に選ぶホテルに、なんとなく当人たちの望む人生像が現れているような気がする。 2004年夏、日本がちょうど"冬ソナ"ブームで沸いていた頃に韓国で放映され高い視聴率を獲得したドラマが「パリの恋人」。 ひとことで言うと、貧しいけれど夢いっぱいの健気で元気な、そしてめっぽう気が強い女の子が、クールな財閥の跡取り息子の心をいつのまにか奪ってしまうというシンデレラストーリー。キム・ジョンウン演じるヒロインとの恋を、日本では今ひとつ人気が出ないが韓国では人気が高いパク・シニャンと、ソース顔でぱっちりお目目のイ・ドンゴンが争う三角関係の構図でドラマは進行する。 財閥の跡取り息子の最初の登場シーンの舞台は、南フランスの高級リゾート、コートダジュールの別荘のプールサイド。真っ赤なオープンカーの助手席には金髪のフランス娘を乗せ、パリの自宅は瀟洒な一軒家の館。ソウルに舞台を移せば、高級住宅街にある広い庭付きの豪邸。 一方、貧しいヒロインは、ニースでは駅のホームで夜を明かし、パリの下町にある自宅は狭い屋根裏部屋、ソウルの自宅も低所得者の人々が多く住む不便な山の上の屋根部屋(ビルの屋上に建てられたプレハブ)。 このように、徹底して富める者と貧しき者との対比シーンが積み重ねられる。 ドラマの中で、財閥ジュニアたちの財力、華やかなライフスタイルをあらわすシーンの舞台として使われているのが、グランドハイアット・ソウルである。 ライトアップされた夜の屋外プールのプールサイドでシャンパングラス片手に二人で語り合うロマンチックなシーン。突然のキスを交わしたのはロビーだし、ピアノの弾き語りをしながらさりげなく愛を告白したのはパリスバー、財閥ジュニアたちが集う大学のアイスホッケー・クラブのパーティー会場はJJマホニーズ、 そして二人が婚約式を行ったのはグランド・ボールルーム…といった具合である。 ちなみに、財閥の跡取り息子がパリで住んでいた家の撮影に使われたのは、江南の江南COEXオークウッド・プレミアホテルの27階のペントハウス。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.58より 財閥一族会食の舞台 韓流ドラマでしばしば登場するテーマのひとつが「財閥ファミリー」の裕福な子女と一般庶民との身分の差を越えた恋。 彼の国ではサムスンの李ファミリーを代表に、三十から五十くらいの財閥が経済の中枢を牛耳っているそうだが、血縁、地縁を何よりも大切にするお国柄だけに、どこもオーナー一族の世襲が基本。従って、財閥の御曹司に生まれた限り、自由勝手な恋愛などは許されない…というところにドラマが生まれる素地があるようだ。 ないと言われれば欲しくなり、許されないとなるとしたくなるのが人間の性。韓流ドラマでも、御曹司、あるいは御令嬢が一般庶民界の自由の楽しさに目覚めるところからストーリーは始まる。 ビジネス上の信用判断においてはその人の「見た目」も重要な評価ポイントであるお国柄だけに、商談に際しては、高価そうな服装を心がけ、高級感あふれる舞台を選ぶこと(つまりお金を持っていそうに見えること)は必須条件である。そこで、舞台によく使われるのが、高級ホテルである。 ホテル新羅グループを傘下に持つサムスン財閥、現代ホテル・グループを持つ現代、シェラトン・グランデ・ウォーカーヒルやWソウルを所有するSK、ロッテ・ホテルのロッテなど、傘下に系列ホテルを持つ財閥も多いが、関係する財閥の商談の場合は別として、大切なビジネスシーンで舞台によく使われるのは、やはりソウルを代表するホテルたちである。 まず、万人に高級だとわかりやすいソウルを代表する格式あるホテルがホテル新羅、新興系や若手ビジネスマンらに人気のグランドハイアット・ソウル、そして、老舗の名門ホテルである旧朝鮮ホテルのウェスティン朝鮮といったところ。 さて、ドラマではどんなホテルが使われているのだろうか? 韓流ドラマではホテルを舞台にしたものが非常に多いが、まずは、財閥ファミリーの一族会食シーンで使われているホテルをあげてみよう。 現代グループご愛用のJWマリオット・ソウルを舞台に使っているドラマは「I love ヒョンジュン」。大財閥の御曹司で世間知らずだが純粋で気のいい青年が、映像制作プロダクションに勤める一般庶民の女性と恋に落ちる。大財閥の一族会食シーンや、御曹司の母親が息子の恋人の父親(タクシー運転手)を呼びつけるシーンなどでこのホテルが登場する。 リッツカールトン・ソウルが一族会食シーンで登場するのは、孤児の生まれだが非凡な才能に恵まれファッションデザイナーとなる、けなげだがとても気が強いヒロインが、アン・ジェウク演じる人気歌手でもある財閥の御曹司と恋をするという、典型的なシンデレラ・ストーリー「星に願いを」。小宴会場を使っていると思われるファミリーの会食シーンのテーブルには、リッツカールトンのお約束、ブルー・ゴブレットが並んでいる。 情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.57より (c)copyright 2011 Hiroshi Mori Corporation, All Rights Reserved. | ||||