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ホテル情報誌「ホテルジャンキーズ」
Vol.91 特集記事より



ホテルジャンキーズ
ワールド
探訪



















今年(2012年)の四月でホテルジャンキーズクラブ(HJC)は創立十五周年を迎えました。

十五年の間には、いろいろありました。当初は勢いあまってなにかとうるさいとホテルからは疎まれたこともありましたし、一時、若い女性向けの雑誌に取り上げられることが多かったせいで若い女性が中心の集まりだと思われた時代もありました。

しかし、現状では男性会員の方が女性会員を上回り、年齢層も四十代、五十代が中心の、身も心も大人のクラブになっています。

時を経て、若かったワインが熟成するように、いつしか円熟した「HJカルチャー」ともいうべきものが育ってきたように思います。

皆さん、確かにいろいろうるさいことはうるさいですが、ホテル側が提供する質の高いサービスについてはきちんと真っ当に評価します。ホテルのこともよく勉強して知っているので、決して度を越した無理は言いません。

そして、自分も大好きなホテルのアンビアンスを構成する「出演者」のひとりとして自覚を持ち楽しんでいます。ホテルにとっても、大変良いゲストではないでしょうか。

さて、HJCには実にさまざまなタイプのHJがいますが、ひとくちにHJと言っても、この十五年間の間に多様化が進み、進化してきています。

今回は、そんなHJの世界とはどんな世界なのか、HJCの正会員が対象の「HJCホテルアンケート 2011」を元に、その全体像を探ります。

旅やホテルは好きだけれど、まだジャンキーというほどまでは…と思われている読者の方々へのホテルの楽しみ方のヒントになれば幸いです。(編集部)


■いつかぜひ
 行ってみたいホテル


コートダジュールの 「オテル・デュ・キャップ・エデンロック

イタリアの「イル・ペリカーノ

パリの「リッツ

タヒチの「ホテル・ボラボラ」

タオルミナの「サンドメニコパレス

イタリアの「ヴィラ・フェルトゥリネッリ

イタリアの「ラ・ポスタ・ヴェッキア

デュバイの「アルマーニ・ホテル

バルセロナの「マンダリンオリエンタル

ニューヨークの「セントレジス

ヴェネチアの「チプリアーニ」

モロッコの「ラ・マムーニア

南アフリカの「ケープ・グレイス

モンテネグロの「アマン・スヴェティ・ステファン

ポジターノの「サン・ピエトロ」

レッヒの「ガストフ・ポスト」

トルコの「イスタンブール・エディション」


■HJの生態

まず、HJCのメンバーにはどんな人たちがいるのでしょうか?


「コレ、ひと筋探求型」

ひとつのホテルブランドの全制覇に人生を賭けている人。本誌で「アマンのワナ」を連載中のアマンジャンキー・田中潤さんもこのタイプのおひとりで、現在二十三軒制覇。「デビューカタログ」を連載中の上野奈穂さんはリッツカールトンジャンキーで、リッツカールトンを追いかけて世界を巡り、結婚式もめでたくリッツカールトン東京であげられました。


「勝負師型」

ホテルカードのポイントやマイレージなどを駆使し、知力を賭けた闘いを挑み、最もリーズナブルな価格で泊まることに満足感を覚える人。

本誌の調査ものでおなじみの疋田敬志さんや、「怒涛のホテル」の有馬俊夫さんなどもこのタイプですし、「激安」「新オープン一番乗り」に賭ける男として有名な宮坂厚弘さんもこのタイプ。


「対象特化型」

ホテルの朝食が大好きで、早起きしては朝食だけのためにホテルへ出かける人。このタイプの方は比較的多く、ひとりでしみじみと楽しむ方、仲間を募ってみんなでわいわい会食を楽しむ方など、楽しみ方はそれぞれです。

ベッドの寝心地について並ならぬこだわりを持っている人。常連投稿者の近藤努さんなどのように、自宅に気に入ったホテルのオリジナルベッドを導入された方。リネン類をホテルに交渉して購入した方も少なくありません。

「ホテルで食べる」ことが大好きな人。本誌で「食べるホテル日記」を連載中の島埜あき子さんのように、食べることが大好き、けれどどうせ食べるならホテルの空間とサービスも楽しみながら食べたい、というような方。そして、アフタヌーンティー、ランチビュッフェ、鉄板焼きはもとより、オムレツ、パンケーキ、アイスコーヒー、スコーン、フレンチトーストなどのように、さらに特化した対象について道を深く極め、突き進んで行く方もいます。

ビジネスホテルの進化の研究そのものが楽しい人。HJCのビジネスホテル研究会世話人の前田敬一さん、ビジネスホテル関係の常連投稿者である兼平剛志さんなどはこのタイプです。

旅館文化と温泉をこよなく愛する人。旅館愛好会世話人の堀越美幸さんの場合、ロングステイも含めて海外経験も豊富ですが、旅館文化への傾倒、こだわり、愛情には並ならぬものがあります。

これらのほか、こよなく愛情を注ぎこむ対象としては、テラス、ボールペン、バスアメニティー、ハンドタオル、レターセット、ラゲージタグ、キィー、ランドリーバッグ、シャワーヘッドなど、誌面にあげきれないほど多種多様にわたってあります。


「地域特化型」

ある特定の地域に集中して通っている人。アジアの会の世話人で「アジア王」とも呼ばれている西村正吉さんなどはその典型です。


「ダブルジャンキー型」

遺跡&ホテル、スパ&ホテル、ゴルフ&ホテル、鉄道&ホテル、グルメ&ホテル、建築&ホテルなどのように、ホテルと好きなものを組み合わせてダブルで楽しむ人。本誌で「ホテルのエステ&スパ」を連載中の阿久津友紀さんなどもこのおひとりで、ホテル選びの際は良いスパがあるかどうかが先にありきです。


■HJの喜びとは
 何か?


HJCアンケートには、「ご自由になんでもお書きください」という備考欄があります。ここを読むのが実はいちばん楽しいと編集部では評判です。ほとばしり出るようなホテルへの熱い思い、この頃ホテルについて思うことなど、めんめんと書き込まれた皆さんのコメントを読んでいると、どうやらホテルジャンキーの「喜び」とは、以下の3つに集約されるようです。


唯我独尊
の世界に
浸る楽しみ


あまたあるホテルの中から、自分にぴったりのホテルをみつけ、自分流の過ごし方、楽しみ方を堪能すること。たとえ他人には理解されなかろうと関係ありません。ひたすら我が道を行くのみです。


喜びを
共有する
楽しみ


同好の士のホテルジャンキー仲間に、「こんな良いホテルみつけた!」「あそこのコレが良かった。ぜひ試してみて!」という、感性や価値観を共有する者どうしで教えあう喜び。知らせる相手がその微妙な「差異」「綾」をわかってくれる人でなければならないので、仲間探しがポイントとなります。


いわゆる
「伝道」
の喜び


自分が享受している、こんなにも大きく深いホテルの楽しみを、まだ知らないホテル・ヴァージンな人たちに頼まれて(頼まれなくても)ホテルを選んであげたり、楽しみ方を伝授し、「アナタに選んでもらって良かった!」「教えてもらって良かった!」という感動の言葉をもらうこと。「ホテルジャンキー冥利に尽きる」とホテルジャンキーたちの間では言われている、しみじみとした感動です。これは「ありがとう」という言葉だけで苦労が報われるという、世のホテルマンたちの感性に通じる世界でもあります。


■常宿にしたい!

ホテルジャンキーたちが、山ほどの失敗をし、紆余曲折の道をたどり、さまざまな体験を重ねてきた結果、いまあらためて「常宿にしたい!」と思うホテルとは、どんなホテルでしょうか?
「今まで泊まったことがあるホテルの中で」という条件で聞いてみました。


常宿の条件

多くの皆さんが「常宿にしたい」理由にあげられていたのは、次のふたつでした。 まず、食事がおいしいこと。なかでも「朝食がおいしいこと。コーヒーがおいしいことは絶対条件」。

そして、安定したサービス。「人によってブレがない、気持ちよいサービスが受けられること」「サプライズもいらないし、一歩踏みこんだサービスとか余計なことはしてくれなくていい。とにかく、やるべきこと、頼んだことを粛々と確実にしてくれることを望む」という、サービスの確実さを求める声が目立ちました。


支持が多かった
2軒のホテルの
共通点


常宿支持がいちばん多く、幅広い層から票を集めたのは、バンコクのマンダリンオリエンタルでした。その理由は、老舗らしい落ち着きのある手厚いサービス、歴史を重ねてきたアンビアンス。「他のホテルに浮気をしても、やっぱり帰りたくなるホテル。もう二十年以上通っています」「スタッフがあまり変わらないので覚えていてくれるのがいい。リピートするほど居心地がよくなる」など、リピーターの方からの支持が多かったのですが、「昔一度しか泊まっていないけれど、いまだにあの圧倒的なオーラがある雰囲気を越えるホテルは少ない」というような、シングル泊の方からの投票も目立ちました。

次点は、ホテルオークラ東京でした。経験豊富な四十代、五十代の男性からの支持を集めました。「パブリックスペースのゆったりした空間に漂う空気感が好き。ここでぜひ暮らしてみたい」「味方につけると懐が深い」「心地良さ抜群なホテル。客にもそれなりのことが求められる、ほどよい緊張感もいい」「ひととおり外資系高級ホテルにも泊まってみて、改めてここは古びてはいるけれど実に贅沢につくられたホテルだったのだと思った。周囲の環境も常宿にするには最高」。

そして、両者に共通したコメントがこれでした。

「ハードから言えばもっともっと良いホテルはいくらでもあるけれど、ゆったりした空間、食事のおいしさ、安定していて安心できるサービスを考えるとやっぱりここになりますね」。


●ほかにもこんなホテルが、ホテルジャンキーが常宿にしたいホテルとして名前が上がりました。


リストを眺めていると、なんとなくHJの好みが見えてきますね。独立系のホテル、あるいは元独立系のホテル、比較的規模が小さい、こじんまりとしたホテル、歴史があるホテル、個性があるホテルが多いようです。


○国内

アグネスホテル東京
 緑の木々で落ち着いた部屋、隠れ家的で最適。

ペニンシュラ東京
 プールがいい。部屋の快適度が高い。

庭のホテル東京
 こじんまりして、サービスがよく、食事がおいしい。

パークハイアット東京
 ベッドの寝心地が最高に良い。使用されている最高級エジプトコットンの肌触りも特別に良い。「ジランドール」の朝食のおいしさ。ここのベーコンは特別な美味しさ。新宿副都心高層からの眺望の良さ。

京都ブライトンホテル
 気持ちがよく温かみがあるサービス、食事、特に和朝食のおいしさ。

ハイアットリージェンシー京都
 シンプル・広い部屋・バスルームの使い勝手で。

「有馬温泉 中の坊 瑞苑」
 温泉はいいし食事はおいしいし、お客様目線のサービスがいい。

「花仙庵 岩の湯」
 大人の宿なので。気がきいていて食事もおいしいものを出す。

ホテルオークラ神戸
 オークラなのに、宿泊代がお手ごろで部屋も広くて、眺めも良くて、朝食も豪華で美味しい。


○海外

インターコンチネンタル香港
 圧倒的な眺めの良さ、香港ではこれ以上の眺めはない。

マンダリンオリエンタル香港
 おいしい食事、安心感のあるサービス。余計なことはしないでいてくれるからほっとできる。

ペニンシュラ香港
 本館の昔の香港らしさ漂う雰囲気と植民地時代を感じさせる濃厚なサービスが好きなので。

カペラ・シンガポール
 温かみがあり、ツボを押えた気が利いているサービス。食事の楽しさ、スタッフの明るさ。

新羅ホテル
 優秀なスタッフによるてきぱきしたサービス、格の高さ。料理もサービスも高品質な食事。

グランドハイアット・ソウル
 華やかなホテルの楽しさがある。ホテルのいろいろな顔、時間が楽しめて飽きない。

ブリストル」(パリ)
 シックで客層がよく(最近はちょっと落ちたが)、食事が秀逸。

「ロテル」(パリ)
 まさに隠れ家で、誰にも邪魔されず、静かで落ち着ける。客層(みんなお洒落)が非常に良い。

サン・ジェームス」(パリ)
 客層が知的で安定しており、品がある雰囲気。しっかりしたサービスに安心感できる。

マンダリンオリエンタル・ハイドパーク」(ロンドン)
 行き届いたサービスが「笑顔」で提供されるロンドンではまれなホテルなので。ロケーション抜群で部屋の居心地もよく、どのレストランも食事がおいしい。

「コノート」(ロンドン)
 こじんまりとしていて、落ち着いた雰囲気、手厚いサービスが受けられる。

「ドルダーグランド」(チューリッヒ)
 安心できる高品質の人的サービスに、リニューアルしてハードの快適度が高くなった。客層の良さ。

「トラウベ・トンバッハ」(バイヤースブロン)
 朝食の質ではドイツ一。

ヴィラ・フェルトゥリネッリ」(イタリア・ガルダ湖畔)
 絶景、歴史的建造物でありながら快適で居心地がいい部屋、レベルの高い食事の質、徹底したサービス精神。

「ザ・ジョージアンホテル」(サンタモニカ)
 手動式エレベーター、狭いテラス席、陽気なスタッフ、全てお気に入り。

カーライル」(ニューヨーク)
 旅慣れたリピーターが多く、客層がNYでも抜きん出て良い。サービス・雰囲気・食事の質の高さ。

「ローウェル」(ニューヨーク)
 ニューヨークの街の喧騒を離れたエアポケットのような隠れ家的こじんまり感がいい。

ラス・ヴェンタナス・アル・パライソ」(ロス・カボス)
 客層の良さ、リゾートとしてのサービス精神全開がそこここに感じられること、食事の演出の楽しさ。

ザ・カハラ」(オアフ島)
 ワイキキからちょっと離れた静かなロケーション。いつ来ても落ち着いてのんびり過ごせる。

「オベロイ・ロンボック」(ロンボック島)
 バリ島の猥雑さや喧騒がないロンボックで、質の高いサービスとハードと食事が三拍子そろっている。


■ホテル選びでこだわるポイント

 1位 客層&アンビアンス
 2位 部屋の居心地のよさ
 3位 コストパフォーマンス
 4位 サービス
 5位 朝食



HJとひと口に言っても、それぞれ好みやこだわるポイントが異なります。ホテル選びの際には、シチュエーション別に、「この人と行くならこうだな…」「今回はひとり泊まりだから…」などと、めまぐるしいスピードで(おそらく)頭の中で自分の経験と知力を振り絞って、自前のHJ検索エンジンをかけていますが、その際のキーワードとなるこだわりのポイントについて聞いてみました。

その結果、自分が泊まりたいホテルかどうかを判断する際に一番気になるのは、「客層&アンビアンス」のようです。得票の6割以上を占めました。やはり、そのホテルに身を置いた際に、自分の価値観、テイストとぴったりくるかどうかが、リラックスできるかどうか、居心地の良さにもつながるからでしょう。

ある意味、「サービス」もそのホテルのアンビアンスを構成する要素のひとつになりますので、これを加えると実に多くの方が、ホテルに一歩入った瞬間にそこに漂う雰囲気、空気を敏感に察知して判断を下しているようです。

次いで「部屋の居心地のよさ」が票を集めましたが、これについては、「ホテルでは部屋で過ごすことが多い」とコメントされている方が多いことにもよるようです。また、ホテルジャンキーならではのことで、皆さん、部屋での楽しみ方の技をいろいろたくさん持っているということもあるでしょう。

3位の「コストパフォーマンス」については、HJの場合、単純に高い安いや「お得」「お値打ち」かどうかということではありません。基本は、払ったお金に見合った満足感(本誌の「ホテル偵察記」ではハートで表しています)が得られるかどうか。チェックアウト時に満足して「気持ち良くお金を払えるか」どうか、と言いかえた方がいいかもしれません。

4位の「朝食」は、三食のなかで宿泊客が最も利用する食事だけに、ホテルのポリシー、考え方が一番はっきり出るポイントでもありますので、ホテルを見定める際のリトマス紙になります。

同時に、「せっかくホテルに泊まって良い気分の時にまずい朝食が出ると、それだけでテンションががっくり下がってしまいます」「ふだんとは違う非日常感がいちばん出るのが朝食。自宅にいる時と同じものを食べてもホテルでは気分がぜんぜん違う。だから家よりまずかったりすると、怒りも大きい」ということでもあるようです。


*情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.91掲載特集記事より抜粋。

詳しくは「ホテルジャンキーズ」第91号をご覧下さい。