TREND & COMPLAIN

アメリカ発ホテルニュース
MEDIA News from U.S.A.


アメリカのメディアを通して見た
アメリカホテル事情レポートです。
ホテル界における最新トレンドやトラブル事情と共に
アメリカ人気質もわかります。


Vol.90 ネバーギブアップ/ドミノピザ方式のルームサービス
Vol.89 ホテルの朝食は本当に高いか/ホテルは訴訟の宝庫
Vol.88 イビキ最終兵器/セレブのバスローブお持ち帰り術
Vol.87 バスローブ監視チップ/絶対リゾートフィー反対!
Vol.86 シャワールームが流行/建築中ホテルが多い都市
Vol.85 リゾートフィー/オーバーブッキング問題
Vol.84 写真美人へのクレーム/子連れ客集客に走るホテル
Vol.83 ホテルブランドが変わる時/アップグレイドの本音
Vol.82 値づけの主導権争い/直前予約は本当に得か?
Vol.81 チップの相場/エコフレンドリーの本音



↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.90 2012年2月発行号より↓↓↓

2012/1/24
Wall Street Journal
(ウォールストリートジャーナル)


ネバー・ギブアップ!

▼「ネバー、ネバー、ネバー」って、なんだか言う人によって納豆が粘ついているようなしけた印象になってしまう。かつて「ネバー・ギブアップ」っていう映画のセリフが流行ったこともあったけれど、やっぱりこの言葉が似合うのはアメリカだ。

▼ここサンフランシスコの街でまわりを見回してみれば、アメリカ人と言ってもアイルランド系、ドイツ系、ポーランド系、ロシア系、イタリア系、スペイン系、フランス系その他いろいろいて、さらにユダヤ系、カソリック系、プロテスタント系、はたまたゲイかなどの属性で分けられ、中国系だって中国本土系に台湾系、さらに出身地別等々、とても書ききれないが、ここはまさに「合衆国」なのだ。日々の生活ではお互いに「だから○△人ってやつは困ったもんだ…」なんて悪口言い合っているのだが、同じ土地に長く一緒に住んでるうちに、同じ様な思考をするようになるから、世の中っておもしろいものだ。

▼先日、キャストロ・ストリートのカフェで実に多種多様な民族で構成される客たちを眺めながら、ドナルド・トランプの新聞記事が目に入った。要は、いまアメリカの景気がいまひとつ回復しないのは銀行がホテル開発に金を貸さないからだ、銀行よもっと金を貸せ!出せ!と「私の主張」をしているのだが、この人、80年代には不動産王と呼ばれ、●289●プラザ・ホテル●のオーナーでもあった。当時は「当時の」チェコ人妻イヴァナがやりたいと言うので、彼女にホテルのGMをやらせていた。ちなみに今は24才年下の元モデル嬢が三番目の妻。破産と奇跡的復活を繰り返しドラマチックな人生を送っている有名人で、大統領戦にもやる気まんまんで名乗りをあげ、オバマにも喧嘩を売って話題になった。目立つの大好きな出たがり人間。まさにアメリカ人が好きなタイプだよな、と記事を見ながら思ったのだが、日本ではどうだろうか。すぐ調子にはのるし、正義を振りかざしてうんざりさせられたりもするけれど、どん底に落ちた敗者が果敢に再挑戦する、そのチャレンジ精神に拍手を送るのがアメリカだ。そして、ミスがあったらそれをきっかけにリカバリーショットを打てばよしとするのがアメリカだが、ミスは悪いことだから隠蔽しようというのが日本では? ネバー、ネバー、ネバー、だから。


2012/1/10
USA TODAY
(USAトゥデイ)


アタシ、遅い方がうれしいの…。

▼自宅に執事やメイドがいない一般人にとって、ルームサービスというのはホテルならではの贅沢イベントである。だから、メニュー表の下に小さく小さく書かれた「ルームサービスのサービス料として○△%頂戴致します」に素早く目を走らせ、携帯の電卓機能で計算し、さらにボーイに渡すチップの金額を加えた総トータルのダメージを心に言い聞かせてから、ようやく電話を取ってオーダーと相成る。それだけの気合いが入っているせいか、ルームサービスがなかなか届かない、頼んだものと違うものが届いたなど、ことルームサービスに関する怒りは他を少しだけ上回るような気がするのは筆者だけだろうか…。

▼さて、そんなルームサービスに関するゲストからのクレームに対応し、こちらのいくつかのホテルでは「ドミノ・ピザ」方式を採用し始めたというのが記事の内容。すなわち、早いデリバリーを売り物とし、もし所定時間内に届かなかったらお代はいただきませんというもの。同時に料理の内容やサービスの仕方にもファストフード化が進んでいる。

▼アリゾナのあるリゾートホテルでは、竹のバスケット入りのランチボックスを20分以内のデリバリー確約で売り出した。要はめんどうなことはせずにバスケットに食料を詰め込んだもの。が、もし、1秒でも遅れて届いたらタダになるため、ドアチャイムが聞こえないふりをするお客が続出…というのは冗談だが、お客の中には「頼むから、遅れてくれ!」とルームサービス史上初めて遅延の期待をされているようだ。

▼高級ホテルブランドとして知られるフォーシーズンズでも「15分でお届けするルームサービス」を米国内のすべてのホテルで始めた。「キャンドルや花を飾った優雅なルームサービスが期待される時代は終わった」というのが同チェーンのヴァイスプレジデント氏の弁だが、なんだかね、ちょっとね…。そんなに急いでどこへ行く。


↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.892011年12月発行号より↓↓↓

2011/12/1
USA TODAY
(USAトゥデイ)


その値段はないでしょ!

▼だいたい不便な場所にある山の上には、山の上価格ってものがあり、ジュース1本が平地の街場の何倍もの値段を取るということもよくある。辺境のリゾートなど、不便なロケーションにあるリゾートにもリゾート価格があるが、こういうことには、ふつうの人は心からすっきり受け入れられはしないだろうけれど、仕方ないと納得するだろう。

▼ホテルにおいて、多くの人が価格的に納得できないものの代表格が、朝食代ではなかろうか。朝食込みの宿泊プランであればタダの朝食が、あるいは、クラブラウンジであれば無料で食べ放題の朝食が、別料金で支払うとなると、一転してランチと変わらぬ値段になる。ときには、ランチより高い朝食だってある。でも、まあ、ホテルだから、リネンのクロスやナプキン、何くれとなく気を配ってサービスしてくれるスタッフの人件費など、スタバとは比べものにならないコストがかかっているということくらいはわかる。

▼さて、USAトゥディの女性記者氏がまたまたえらくお怒りなのが、ニューヨークのハイエンド・ホテル、つまり高級ホテルの朝食のお値段である。たとえば、タイムズスクエアにある作家たちのホテルとして有名な老舗ホテル●アルゴンキン●では、メニューの中の最も安い「ボウル」入りのオートミールが15ドルするそうだ。●グランドハイアット・ニューヨーク●では、ルームサービスの朝食をとったところ、シリアルが20ドル。記者氏が、皆さん、これってちょっと高すぎるとは思いませんか? と呼びかけたら、「私なんか、ミルウォーキーのハイアットリージェンシーでオートミールに税込み16.27ドルも支払いました」なんていうフォロワーたちが、続々登場してきている。

▼クラブフロアの宿泊者向けのタダの朝食が食べられる「クラブラウンジよ、ありがとう」なんて言ってる記者さん、ホテルの朝食代金にあなたは目くじら立てているけれど、あなたがいつもスタバで食べる4ドルの朝食代とホテル、それも物価が世界の中でも最も高い部類に属するニューヨークの、しかも高級ホテルと比べないでもらいたい、というのが私の正直な感想。しかし、こういう風な正義を振りかざしたような論調、アメリカ人ってどうも好きなんだよな。正義は我にあり!


2011/12/7
USA TODAY
(USAトゥデイ)


アンタのせいでもあるのよ!

▼ホテル滞在の際、たまたまコネクティング・ルームにアサインされ、知らずにこちら側のドアの鍵を開けたままにしておいたところ、このドアは何かいな?と思ったお隣さんが、突然現れて、お互いにえらく驚いたことがある。お互い男でしかるべく着衣だったからよかったようなものの、もしこれが女性で風呂上がりで裸だったりしたら、訴訟好きのアメリカ人の場合、ホテルの責任であると言ってホテルを訴えるだろうなぁと思ったことがある。

▼さて、数年前、こちらアメリカのテレビ局の女性レポーターがナッシュヴィルのマリオット系ホテルに滞在時に、外部から侵入した犯人によって、ドアののぞき穴を通してスパイ行為をされ、ヌード写真を盗撮されたという事件があった。犯人はつかまり、一件落着かと思われていたのだが、ずいぶん後になってから、このレポーター氏が「のぞき穴」なんてのはプライバシーの侵害だとホテルを訴え、1,000万ドルの訴訟を起こして話題になっている。

▼以前にも、ニューヨークのある有名ホテルに泊まって一晩寝たら、体中に虫に咬まれた跡が…とホテルを訴えた弁護士夫妻がいたが、こうして考えると、ホテルは訴訟の材料の宝庫かもしれない。なにしろ、隣人の家の前で滑って転んでケガをしても、その責任はその家の雪かき状態が悪いためだと訴え、それが簡単に認められてしまうお国柄。この路線でいったら、ぴかぴかに磨いた大理石のフロアは滑って危険、回転ドアもはさまれると危険、部屋の中だって、エアコンの温度調整がきかなくて風邪をひいた、なんてのもありだろう。

▼さて、そんな記事に対して、読者の皆さんの反応はといえば、「そんならアンタは世界中を訴えなさい」なんてのもあるが、ホテルのセキュリティー体制にはけっこう安心できないところがあるから、自分の身は自分で守らないと、みたいな意見もある。天は自ら守るものを守る。


↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.882011年10月発行号より↓↓↓

2011/10/3
USA TODAY
(USAトゥデイ)


イビキを止める最終兵器は…。

▼アップルの創立者、故スティーヴ・ジョブスは世の中で仕方がないとあきらめられていたことでも、イヤなことは絶対イヤという人だった。おかげで我らマックユーザーは周辺機器のケーブルがごちゃごちゃ絡まった状態から解放され、美しい環境でPCを使うことができている。彼はまた、機械の構造上、あるのは仕方ないとされているPCの冷却モーターのノイズが大嫌いで、「とにかくこの音をなくせ!」とエンジニアたちに指示していたそうだ。彼のような人がホテル界にもいてくれたら…と、つくづく思う。

▼さて、記事はスティーヴばりにホテルの客室の騒音が気になるというお方の「部屋の騒音を、なくせ?!」。彼女はホテルの部屋に入ると、まず耳をすます。彼女がとりわけ気になるのは、エアコンや照明器具などの機械音だそう。あまりにひどいと、ホテルのスタッフを呼んで、「アナタ、こんな部屋で眠れる?」と尋ねるのだそうだが、夜勤明けかなんかで、「ハイ、今すぐにでもバタンキューで眠れます」なんて言いたいスタッフもいるような気もするが…。

▼J.D.パワー&アソシエイツの北米における顧客満足度調査によると、ホテルのクレームで一番多いのは、騒音だそうだ。眠りを邪魔されると、人間アタマに来るようだ。騒音の中でもやっかいなのが、隣室のイビキ。テレビの音が大きすぎたり、声が騒がしければ、「隣室のご迷惑になりますので、もう少々、お静かにしていただけますか?」と言えるが、眠っているゲストを起こして、「イビキ、止めてください」と言う訳にもいかぬだろうが。

と思っていたら、なんと、インターコンチネンタル・ホテル・グループ系のホテル・ブランド、クラウン・プラザでは、今のところ欧州のみが対象だが、断固コレをやると決めたそうだ。禁煙ルームならぬ、イビキが漏れない特別室も検討中で、さらには、イビキ専門のモニターに夜間、廊下をパトロールさせ、あまりにひどいと判断した場合はフロントに連絡して「お静かに」と部屋に電話してもらう。それでも止まない場合、最終手段としては部屋のドアをノックしても止めさせるところまで考えているそうだ。ということは、隣で寝ているパートナーのイビキを密告して止めてもらう、という手もあり。なんせホテルはラストリゾートだから。


2011/10/5
USA TODAY
(USAトゥデイ)


なぜか出来心が起きるもの、それは…。

▼しばしば犯罪者は、手口は「○△の本で読んだのを真似した」とか「ドラマで見てついやってみたくなった」などと語り、自分の罪を少しでも他人に着せようとするものだ。こんなの書いたら、きっと模倣犯が出てくるにちがいないと思うのが、この記事。タイトルは、『$100のバスローブを盗むのは、なんて簡単なんだ!』。

▼前号の本欄にて、ゲストと一緒に"チェックアウト"してしまうバスローブなどリネン類があまりに多いことに業を煮やしたホテル側が、特殊なチップを生地に埋め込み、センサーで感知して盗難を防ぐという手段に出たことを書いた時には、ここまでやんなくてもいいのにねぇ、正直と思っていたが、今回の記事を読むと、やっぱりやらないとダメなんだろうな、この国、アメリカでは。

▼記事で明らかにされた、ある有名人アメリカ人夫婦の手口は、実に簡単。部屋にチェックインしたらすぐに妻がハウスキーピングに電話し、「バスローブがひとつ足りないわよ」と言って、持ってきてもらうのだそうだ。いつもなんの疑いもなく持ってきてくれるそうで、そのひとつ多い分をお持ち帰りする。高級ホテルにばかり泊まる彼らがそうして貯めこんだ(盗んだ)バスローブの数は膨大で、先日そのうち50枚あまりをオークションに出し、手口の公開とあいなった。あまりにあっけらかんと語る彼に、「盗品を売るのは犯罪だよ」などという反応も出ているが、彼に罪に意識はないようだ。なにしろホテルのロゴ入りのバスローブをそのまんまオークションに出してるんだから。

▼それにしても、なぜか、金を充分に持っている人でも、つい出来心が起きてしまうのが、バスローブ。せいぜい$100〜$200のものなのに、買わないで、こっそり持ち帰ろうとする。それも、いくら洗濯してあるからといっても、新品ではない使用済みのものだ。きっと、何か、たまらなくそそるものがあるのだろう。


↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.87 2011年8月発行号より ↓↓↓

2011/7/28
USA TODAY
(USAトゥデイ)


ついて行きます、貴方と一緒にどこまでも。

▼なんと、ホテルの客室で使用される5〜20%のタオルなどリネン類が知らぬ間に「チェックアウト」してしまい、行方不明になるらしい。推定無罪ゆえにあくまでも憶測であるが、高級タオルのふんわりとしたあまりの使い心地の良さに、つい出来心のゲストがスーツケースにこっそりもぐりこませるケースもあれば、従業員がご自宅用にお持ち帰りになるケースもあるのでは? 

▼バスローブの場合はものによっては200ドルくらいする高額商品ゆえ、ホテル側も早くから対策を立てている。つい「間違って」バスローブを持ち帰ってしまった後、「この度は当ホテルのバスローブをお買いあげいただきまして誠にありがとうございます。お代金はお客様のカードより引き落としさせていただきました。またのご愛用お待ち申し上げております」というような慇懃なレターがホテルから届いた方はいないだろうか? この噂が広まったため、紛失件数はぐっと少なくなったそうだが、タオルにまでいちいちそんな手間暇をかけてはいられないというのが、従来のホテル界だった。

▼さて、テクノロジーの進歩は、社会における無言の監視の範囲をどんどん広げている。街のいたるところに監視カメラが取り付けられ、万引きが多発するショップでは商品に盗難防止用のタグが付けられている。そして、ついにホテルでも始まった…。「RFIDチップス」というのがそれで、バスローブ、バスマット、タオル、シーツ、デュベカバーなどに縫い込まれている。6フィートくらい離れたところからでもリーダーを使って感知することができるそうだ。クローゼットから何が何枚出庫されて、ランドリー済みのものが何枚入庫されたという記録も残すことができる。在庫管理も楽になる。確かに便利にはちがいない。

▼けれどね…。ホテルとしても、大切なゲストや自社の「レディース&ジェントルマンにサービスする私達もレディース&ジェントルマンです」という従業員を疑っているなどとは口が裂けても公に言うことはできない。だから、表向きは、在庫管理のための導入ということにしているようだが本音は明らか。本当にうっかりハンドタオルなんかをスーツケースに放り込んでしまったりすることがないよう、今後は気をつけねば…。わーたーしーはやってない、潔白だ?。


2011/7/25
USA TODAY
(USAトゥデイ)


「しつこいっ!」と言・わ・れ・て・も。

▼人間誰しも気になってしょうがないという、他人にはうかがい知れないこだわりがあるものだ。同紙の記者バーバラ女史の場合、それは「リゾート・フィー」。その存在が納得できないようで、繰り返し繰り返し記事で取りあげている。筆者はそんな彼女のウォッチャーとして、動向を追いかけている。

▼ご存じない方のために説明すると、リゾート・フィーとは、1日当たり10〜20ドル程度の定額請求というケースが多いが、ホテルによっては宿泊代の14%など、ホテル側が、宿泊代金に加算して請求するエクストラチャージ。いったい何が問題なのかというと、その対価が、プールやフィットネスセンター、ラウンジの利用など、人によっては使わないサービスまでも含まれているということ。「じゃあ、それ全部使いませんから」と申告してタダになるものであればいいが、そうは問屋は卸さない。「いちおうどなたにもお支払いいただくという当方の決まりになっておりますもので…」と慇懃無礼に言われるのが落ち。

▼利用者の言い分は、「だったら最初から宿泊代に込みにして料金設定すればいいのに」。最初は安いと思わせておいて、後から実はいろいろこれに付きましてね…というのは、気分が良くないというわけ。そりゃ、誰だってそうだろう。記者氏の主張は、使ったものに対してだけお金を払いたい。受益者負担というしごくまっとうな考えだし、読者のコメントもほとんどが「リゾート・フィー反対!」で気運も高まっている。私たちはこんなに正しい、なのに、なぜ、なぜ変わらないのよ?と、だんだんいらついてきているようだ。だって日本では「辞める」と公言した首相だって、あれだけみんなから言われ、海外の首脳たちから存在を無視されても「ボク、辞めないもんねぇ」と居座っているんだから…。しぶとい奴はしぶといし、絶対に一度握ったものは放さない。ヤメロっと言われても…。


↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.86掲載↓↓↓

2011/5/5
USA TODAY
(USAトゥデイ)


「見合い写真」と思えば腹も立たぬ。

▼見合い写真(あるいは履歴書)と目の前の本人がどうしても同一人物とは思えない…そんな経験、誰しもあるだろう。ウェブで知り合った人たちがオフ会で「会ってみたら、ぜんぜん違う人だった」なーんていうのもよくあること。

「(誰でも)美人に撮れます」を売り物にさまざまな修正・調整機能が付いたデジカメが普及し、さらにはコンピューター上でちょいと修正を加えれば、お望みの貴方になれる。太いアンヨをモデルばりのすらりとした足にもできるし、お目目も少々ぱっちりさせて、顎のラインを削ってすっきり顔に…なんてヴァーチャル整形だってできちゃう。誰でも「写真美人」になれるご時世だからウェブ上にあふれている美人美男諸氏の写真は、まあ少し割り引いて見ないと。

▼さて、ホテルでも事情は同じだ。記事は、ウェブ上に掲載されたホテルの写真を見て予約し行ってみたら、ぜーんぜん違っていたというある利用者の怒りのクレームを取りあげている。

サンフランシスコのあるホテルに泊まったところ、「写真ではモダンできれいでビューティフルなシティホテルに見えたのに」実際には、二機のエレベーターのうち一機は壊れているし、バスルームもあちこち染みだらけで汚いし、製氷器はうるさい音を立ててるし、と文句たらたら。

▼果敢にネット予約トライするコラムを本誌で連載中の「バアサン」さんも含めて、インターネットの普及と共にウェブ上の写真や説明を見てホテルを予約する人が急激に増えているが、とにかくこの写真というのが当てにならない。行ってみたら現実は似ても似つかずでがっかりしたという声が後を絶たない。

▼記事には、どこのホテルブランドがウェブと現実との落差が一番大きいかについて語る、ホテルには年間100泊近く泊まるという人の談話も書かれているが、それはクラウンプラザだそうだ。

また、『リッツカールトン・ココナッツ・グローヴ』のウェブ上の写真ではデラックスルームの部屋にプラントと美しいブランケットが写っているが、実際にはな〜い!とか記者は追求しているが、「ホテルは正直であるべきだ」なんて言う清教徒的意見には少々賛成しかねる。化粧をしてすっかり別人に化ける女性たちに「詐欺だ!」なんて、貴方は言いますか?

汝、目に見えるものを信じるなかれ。

2011/5/3
USA TODAY
(USAトゥデイ)


金を払ってくれる猫がいい猫であ〜る。

▼ 「ホテルはコドモ達のファンタジーのアイコンになりつつある」と始まる記事。バービー人形でもディズニーのアニメのキャラクターでもなんでもいい、コドモ達が喜べば。そして、それによって親たちがつい財布をゆるめてホテルに来て散財してくれるものであれば。なんせ、金は誰からもらっても同じ金。ほら、むかし、ア・ラ・ブ・のエライお坊さんが…ではなかった(年が知れるな)、中国のエライ人が「黒い猫でも白い猫でも鼠を捕る猫がいい猫だ」と言ったではありませんか。

▼さて、それにしても、節操がないとは以前からも思っていたが、ホテル界がこれほど何でもありの世界だとは。

アニメのキャラクターがコドモの誕生パーティーにサプライズ参加したり、朝食の席に現れたり。まあ、アニメの本家であるディズニーが経営するホテルが、プリンセスをテーマにした「ロイヤル・ルーム」を作り、そこのバスタブはアラジンのランプの形をしている…なんていうのはまだいい。

けれど、パリでもあの誇り高きパラスホテルのプラザ・アテネが夏休みで(金持ちの)ファミリー客が多い夏季に限り、バービー・ルームを用意しているのだそうだ。アラブの富豪のコドモ達を惹きつけるため、背に腹はかえられないのだろうけれど、「当ホテルは大人のホテルですからお子ちゃまはお断り」と眉を上げてスノビッシュに言っていたのは誰だったけ?

▼もっともコーネル大学のエライ先生によると、こうした傾向はホテルにとってファミリー客を呼び込めるメリットがあるのと同時に、単価をレギュラールームよりも50%前後高くできるうまみがあるとのこと。

なるほどね。現状に甘んじて、そのあげく売れ残ってネットで叩き売りするよりも効率がずっといいってわけだ。でも、節操のないホテル業界のこと、明日はまたがらりと見解を変えているかもしれない。

今日を生き延びろ、されば明日がある。

↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.85掲載↓↓↓

2011/4/13
Wall Street Journaly
(ウォールストリート・ジャーナル)


競争は続くよ、どーこまーでーもー。

▼「差別化」という言葉がある。「競合他社と差別化をはかるため…」などのように、誰かが何かやりたいことを進める時の枕詞のようなものである。

ホテル界においても「差別化をはかるため」、これまでにもアメニティーの豪華度競争、ベッドのヘブンリー度競争、枕のこだわり競争など、さまざまな闘いが展開されてきたものだった。さあ、今度はいったい何?

▼記事によると、最近、都ならぬ高級ホテルで流行るものは、こだわりのシャワールームなのだそう。かつて、空から雨が降るがごとく湯水が降りそそぐレインシャワーがホテル界を席巻したことがあった。

今度は何かと思えば、バスタブを取り払ってでも充実のシャワースペースを作ることにどこも躍起になっているようだ。

▼あるホテルでは、シャワールームだけで10平米以上の広さがあり、シャワーヘッドは高さ別に5カ所にある。

ある女性ゲストの感想がおもしろい。「まず、最初に考えたことは、どうやって使うのか。そして、いったい、いつ使うのか?」。

手がけた建築家曰く、「皆さん、ホテルではいつもとはちょっと違ったご体験、ご家庭よりもほんの少し贅沢なものを望んでいらっしゃるのですよ」。

最近の事例では、あるマンハッタンのホテルの2メートルほどの高さのビューウィンドウ付きシャワールーム。ロンドンのデザインホテルでは、シャワールームが全面ガラス張りでベッドルームと一体化しているというか、丸見え状態。

▼ホテルチェーンではスターウッドが特にシャワー研究には熱心で、2001年にウェスティン・ブランドでデュアルヘッドのヘブンリー・シャワーを出したが、あっという間に他社に真似され、現在、第二世代の新兵器をコフラー社と共同で開発中。

競争というものは、いったん始まってしまえば際限がないものである。二人で同時に浴びる二人用シャワールーム(何のため?)、ハンモック・シャワー(!)、シャンデリア・シャワー(!!)ほとんどなんでもあり段階に入ってきている。

「お客様に『Wow!』と思っていただけるだけで大成功ですわ」とはホテル側のコメントだが、スイッチを適当に押したら突然わけもわからず多方向から噴射攻撃を浴びて「Wow!」どころか心臓が止まるほど驚いた経験が筆者にはある。もう、どうにも止まらない。

2011/4/13
USA TODAY
(USAトゥデイ)


Wow!はみんなの合い言葉。

▼ 「さて問題です。アメリカの都市の中でアンダー・コンストラクション(建築中)のホテルルームの数が一番多いのはどこでしょう?」。

そんな質問から始まる同紙記事。アンダー・コンストラクション物件の多さでその街の活気度、元気さを計ろうというものである。リーマンショック以降、リセッションにより多くの新規ホテルプロジェクトが頓挫してしまったが、撤退するよりはこのまま進めてホテルを建ててしまった方が得、あるいは、それなりに需要を見込んだオーナー側の判断で進行しているものもある。

▼最初にヒントがあり、「ラスヴェガスではありません」とある。かの地でホテルラッシュがあったのはもうずいぶん昔のことのようだが、思えばほんの数年前のこと。ちなみにラスヴェガスで現在建築中はわずかに96室…。去る者は日々に疎しである。

さて正解は、やはりニューヨーク。多くの新規プロジェクトが中断したと言われていたが、同紙によると、現在ニューヨークで建築中のホテルルームは6,763室。1年前に比べると36%増えているそうだ。単純計算で200室クラスのホテルが30軒、あの狭い街に増殖していることになる。

▼中でも注目されているのは、6月にタイムズスクエアの西側にオープン予定のヨーテル・ニューヨーク。ニューヨークで今年オープンを予定しているホテルの中では最大規模である。ロンドンに本社がある「ポッド・ホテル・オペレーター」、ヨーテルの初アメリカ進出となる669室のホテルで、「ハイ・スタイル、ロープライス」、すなわち、狭いけれどスタイリッシュな部屋が売り物。室料は149ドルだが、フェイスブックで予約するともっと安くなると言う。

客層を問われたホテル側は、「これまでWホテルに泊まっていた人も、こっちの方が同じデザイン性でより安いと思うだろうねぇ」と挑発的宣戦布告。さて、Wow! と叫ぶことになるのは誰だろう?

↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.84掲載↓↓↓

2011/1/4
USA Today
(USAトゥデイ)


「別の名前」で出てます…。

▼最近、ホテル界では「当ホテルではこれもあれもそれも可能になりました!」と、提供するサービス項目をどんどん追加する傾向にある。

しかし、これらは必ずしもフリー、つまり無料ではサービスされない。たとえば、インターネットアクセス、Wi-Fiアクセス。ハイ、アクセスは確かに出来ます、有料ですけれど、というホテルもけっこう多い。

▼記事は、「こんなのはまだ許せる、金を払う対象のサービス内容が明確だから。頭に来るのはリゾート・フィーなるものである」というもの。

実はこのリゾート・フィー、以前から当地のメディアでもしばしば指摘されてきた、利用者が納得できない「悪者」の代表。一日当たり10ドルから20ドル程度だが、この存在に気づくのはたいていは宴の後。日常を忘れてたっぷり楽しみ、リゾート惚けした頭で請求書と対面する時だ。

部屋代、食事代、ミニバー使用料などの項目と並び、さまざまな税金、サービス料などに挟まれたあたりにさりげなく(と思われる)もぐりこんでいる(と思われる)。「ん? なんだコレ?」と気づけばまだ幸いだが、本誌で「アマンのワナ」を連載中の田中潤氏のようにきっちり請求書をチェックする日本人は少数派ではないだろうか。

▼記者氏が紹介しているあるコラムニスト氏のカリブの某メジャーチェーンホテルでの体験例には、さすがに驚いた。そこでは1日当たりの定額のリゾート・フィーをチャージするのではなく、ルームレートの14%相当分をチャージするシステムなのだそうだ。

コラムニスト氏が泊まった時期はハイシーズンでもあり一泊309ドル。従って毎日43ドルを支払うはめになったそうだ。

その対価は何かと言えば、エンターテイメント・ラウンジ、フィットネスセンター、プールの利用。それでいながら、ボトルウォーターも新聞もインターネットも無料ではなかったとそうだ。

▼こうした利用者サイドで高まる不満に対して、一時は「当ホテルではリゾート・フィーを一切頂戴いたしません」を売りものにするホテルも現れたりした。

が、しかし、長引く経済不況の中で、ウェスティン系の「リゾート・サービス・チャージ」などのように、名前を変えて、再登場しつつあるようだ。

「別の名前」で出てますので、皆さん、くれぐれもご注意を。

2011/2/7
The New York Times
(ザ・ニューヨーク・タイムス)


予約はサプライズ・ゲーム?

▼ この記事を書いた記者氏はホテルのオーバーブッキングというテーマにこだわり、追っている人。

今回の記事は、やたらとオーバーブッキングに遭遇するというある弁護士のケースを例に、ホテル業界においては仕方のない事として悪びれもせずに続けられてきたオーバーブッキングだが、もしかしてこれって、単なるホテル側の体の良い嘘ではないのか、という疑問を持つ。

▼この記者氏、去年の12月にも、ニューヨークのウォルドルフ=アストリアで起きた大量のオーバーブッキング事件について記事を書いている。

サウジアラビアの王族ご一行様100名あまりが、よりによって感謝祭の休日に、突然「泊まることにした」と言ってきたのをホテル側が断れず(断らず、といった方が正しいだろう)、予約確認書を手に次々にチェックインに現れたお客たちに他のホテルへ移ってもらった、というのが事の顛末。

長年に渡って毎年この時期に一族で泊まるのを楽しみにしていた顧客の一人が「手前どもと"同等"のヒルトンに代わりのお部屋をご用意いたしましたので」というホテル側の対応に怒り収まらず旅行サイトに投稿したため、事件はあっという間に広まった。

▼昨今はさまざまな予約サイトを通じての予約も増え、ホテル側が予約状況をコントロールするのがむずかしくなってきているという事情もあるが、あれこれ調べたり考えたりした末に選び、滞在を楽しみにしていたホテルにようやく辿りついてホッとしたところ、オーバーブッキングを理由に見も知らぬホテルへ移動するはめになったとしたら、はたしてあなたは納得できるだろうか。

こういった目に遭わないための回避策として記事に書かれていることは、実にアナログでシンプルというか。「事前に電話せよ。少なくとも、到着時のサプライズだけは防げるだろう」。

求めよ、されど与えられんこともあるってことらしい。

↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.83掲載↓↓↓

2010/12/9
Wall Street Journal
(ウォール・ストリート・ジャーナル)


別れても、好きな人。

▼アメリカのある地方都市で、34年間に渡ってホリデイイン・ブランドとして親しまれてきたあるホテルが、今月末、チョイス・ホテルズ・インターナショナルのホテル・ブランドのひとつであるクラリオン・ブランドに看板を掛け替えることになったというエピソードで記事は始まる。

▼このホテルのオーナー氏が語るには、ホリデイインと契約を続けたかったのだが、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(以下、IHG)側から要求されたリノベーションとアップグレイドのための費用160万ドルをまかなえなかったからだという。

氏は悲しげに言う。「私の道は3つだった。独立系ホテルとしてやっていくこと。破産。もっとリーズナブルな契約先を探すこと」。

▼氏のホテルは地元では流行っているホテルのひとつでもあり、じゃあ、独立系でやれば、という気もするが、ともかく、部屋の壁紙やバスルームのタイルなんかは薄汚れてきているし、テレビもフラットテレビですらない。ロビーやレストランも改装が必要、ベッドの入れ替えや新式シャワーへの交換など、IHG側が提示するスタンダードに合わせないと契約は続けられない。

▼「売ってしまおうとも思ったんだが、買い手がみつからなかった」という氏の7階建てのホテルに去年、彼が提示した売値は7百万ドル。今年、5.5百万ドルまで下げてみたが、それでも売れなかったそうだ。

その結果、氏が選んだのが、第3の道。看板をクラリオンに掛け替えること。同ブランドのスタンダードに合わせるに当たって必要な改修費用は30万ドル。ホリデイインの5分の1以下ですむ。ベッドを替え、バスルームなどをきれいにすることに主として費用は使われ、ロビーやレストランの改装は不要。

▼このようにホリデイインから鞍替えするホテルの新しいブランドとして多いのは、コンフォート・インやクオリティー・イン・ブランドの他、ラマダやハワード・ジョンソン・ブランド。その結果、レート設定はホリデイイン時代に比べると25〜30%低くなるそうだ。つまり、売上減にグレイドダウン。

「私はホリデイインとの関係を続けたかったんだ。古くからのつきあいだし、今でも愛しているんだ…」って、なんだか男女の関係のようだが。

金の切れ目は縁の切れ目。

2010/12/8
USA Today
(USAトゥデイ)


「特別に…」の甘いささやき。

▼チェックインの際、美人のレセプショニストが特別な笑みを浮かべ、そっと顔を寄せ、あたりを伺うように声をひそめ、貴方の目をみつめながら情熱をこめて話しかけてきたことはありませんか? 

「○△様、プラス◇円お支払いいただければ、特別にクラブフロア(あるいはスイートルーム)にアップグレイドさせていただきますわ。これはとってもお得ですよぉ」。

最近、ホテルでよく経験することのひとつが、チェックイン時におけるクラブフロアやスイートルームへのアップグレイドの売り込み。記事はそんなホテル側の事情について書かれている。

▼こちらアメリカではそろそろ景気が戻り始めていると言われ、ホテルのオキュパンシーも上がってきているとは言うものの、企業もまたマスコミらに叩かれないよう人目を気にし、そろりそろ〜りと静かな利用の仕方をしている。

つまり、高級ホテルを使うことは使うが、部屋は以前のようにクラブルームやスイートルームが当たりまえというのではなく、スタンダードルームかせいぜいその上程度。

▼となると、景気が良い頃に需要を当て込んで増やしてしまったクラブルームやスイートルームが空いてしまう困ったホテル。

そこで、各ホテルでは冒頭のような指示が出ている。この戦法、かなり成功率が高いようで、「あと○△プラスすれば…」の差額でゲストがぐらりと来やすい数字は、ずばり100ドル。

「あと100ドル足せば、スイートルームに…」という甘いささやきは、一瞬のうちに、脳内パラダイスを生む。広々とした部屋、エグゼクティブ感あふれる優雅なラウンジ、シャンパンサービスがたったの100ドルで手に入る…。

最近では、そんなホテル側の足元を見て、団体客がクラブフロアやスイートを格安料金で出すよう要求してくることもあるし、逆にホテル側から「お安くしておきますから」と団体セールスの際に売り込むチェーンもあるのだという。

売れるものは拒まず、けれど、去る者は去る…。

↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.82掲載↓↓↓

2010/8/23
Wall Street Journal
(ウォール・ストリート・ジャーナル)


レコンキスタへの道は険しい

。 ▼インターネットの普及のおかげで自分のところの商品の値付けのコントロールの主導権を失ってしまった企業は多い。もはや「定価」などというものは有名無実で、代わりに、「メーカー希望価格」などと記される始末である。

たとえば、旅行を考えている人の場合、Priceline.com Hotwire.com などのようなトラベル・オークション・サイトのユーザーの多くはまず、BiddingFor Travel .comや Betterbidding.com をチェックし現在の相場状況を頭に入れるだろう。

記事は、失地した企業が最近、レコンキスタ=失地回復運ののろしを揚げているという内容。各社の例をあげながら、対応策を提案しているのだが、さて…。

▼行き先の都市だけ決まっていてホテル選びをする場合、Priceline com. や Hotwire.com では「bid blind」、すなわちホテル名やブランド名は明らかにせず、「ニューヨークのミッドタウンにある四ツ星高級ホテルが1泊150ドル」のようにクラスと金額だけで入札を募り、落札され当人の手続きが済んだ段階でどこのホテルか明らかにする。

したがって、売り手のホテル側にとっては、あからさまに「○△ホテルが定価の70%オフ!」などということが公にさらされないのでブランドを傷つけられることはない。だから社名やブランドを隠すよう申し入れよ…という対策法を記事では書いてある。

▼が、人の口に扉は立てられない。昨今は、あっという間にツイッターなどを通じて、「みんな聞いて! 今ボク、すごーくお得なレートで○△ホテルを落札しちゃった! さっきPに出てた150ドルの超高級ホテルって、○△ホテルだよ!」と。

▼また、システムや予約先の街の地理事情を熟知しているユーザーになってくると、さらに手が混んだことをする。

あらかじめ、ある設定日に四ツ星か五ツ星のホテルに泊まりたいことを提示した上で、明らかにそのクラスのホテルがない近隣のエリアをリクエスト、希望レートは安く出しておく。そうすると、レートは合うホテルがあっても、クラスが合わず取引は成立しない。何度か交渉が繰り返されるうちに、「ご希望のエリアにはないが、近くにご希望のクラスのホテルがあるのでレートは特別に…」と、狙っていたホテルが提示されることもあるのだという。

待てば甘露のレートあり。

2010/8/23
USA Today
(USAトゥデイ)


早いが得が、遅いが得か。それが問題だ。

▼ 売れ残るよりも叩き売り、というわけで、ホテル界でも直前予約が大いに流行っているが、そろそろアメリカのビジネス旅行マーケットも復活してきているので見直しの時期に入っているのではないかという記事。

▼同紙が独自に調査を依頼した格安ホテル予約サイト Getaroom.com によると、実際に早割りで30日前予約をする利用者が前年よりも倍近くに増えており、この傾向はマリオット、スターウッドなどの大手ホテルチェーンにおいて特に顕著であるそうだ。

同サイト社長氏は「ホテルはより戦術的になってきており、今年の初め頃のようにラストミニット・パニックには陥らない」と語り、その実例として最近多い予約期間限定の特別セールをあげている。

要は48時間とか72時間に限ったタイムセールスでレジャー客対象に売れるだけ売った後でレートを再び引き上げ、残った部屋は直前予約することが多いビジネス客らに高く売るというわけだ。

▼さて、日本でも直前予約専門のサイトが出来、本誌のネット予約ウォッチャーであるヒキダ氏の調査によると、メジャーな予約サイトでも直前にレートをかなり下げているようだ。が、実際にはどうなんだろうか?

30日前に予約した人たちが、果たして最後までその予約をキープしているのだろうか。ヒキダ氏のように、とりあえず、仮予約を入れて押さえておいて、もっと安いレート、あるいは、他ホテルのお得な商品が出たら、予約を乗り換えてはいないのか?

▼しかも、景気が良い時にはめちゃくちゃに強気に出るアメリカのビジネス客たちが、自分たちがワリを見るような今の状況で、高いレートに黙って従っているのだろうか?

アメリカ人よ、リメンバー「いわゆるAIG」を。リメンバー・つい数年前に高級ホテルで跋扈していた金融関係の高給ビジネスマンたちを。彼らは、あなたたちよりもずっとお得な安いレートで泊まりながら、ホテルではデカイ面をしていたのだよ。

驕れるものは、またすぐ戻る。

↓↓↓情報誌「ホテルジャンキーズ」Vol.81掲載↓↓↓

2010/7/29
Wall Street Journal
(ウォール・ストリート・ジャーナル)


実はみーんな、聞いてみたかった…。

▼前号80号の「チップ特集」は大人気だったそうだが、いったい相場はいくらぐらいなのか、やはりチップは皆さん気になることらしい。記事は、スターウッド系のセントレジスでグローバル・ブランド・リーダーを務め、出張でホテル泊まりが非常に多いというポール・ジェイムズ氏が自らの体験を通した「ホテルで良いサービスを受けるため」のコツを語っているもの。

▼なにしろ、ホテル会社の人が言うことなので、いかにも信頼性がある、と感じさせるのがこの記事のミソ。氏曰く、ルールNo.1 は、コンシエルジュと良好な関係を結ぶこと。しばしば立ち寄っては、感じよく接し、リコメンドしてもらったことに対するお礼は後で必ず伝えること。ちなみに彼はネットで予約した場合でも、後からコンシエルジュあてに直接電話を入れ、部屋の要望などを伝えておくそうだ。そして、コンシエルジュへのチップは一日当たり10〜20ドル。何かしてもらったら、その日のうちにお礼と共に渡してもいいし、滞在の最後にまとめて渡してもいいとのこと。

▼ここでチップの話題が出た際に、記者が「じゃあ、この場合はいくら?」と尋ねたらしく、記事にはそれぞれ相場が羅列されている。記者の「ほら、こういうのって役に立つでしょ?」という声が聞こえてきそうだ。荷物を運ぶベルには2〜5ドル、ハウスキーパーには一日当たり2〜4ドルを封筒に入れてチェックアウト直前に置いておく…。

▼ただし、ここで注意する必要がある。これはあくまでも世界中の人々が読む新聞の記事に載ることを前提にした話であり、彼も素性を明かしているので、ヘタなことを言うと、現場からも会社からも文句が出かねない。ハウスキーパーへのチップに関しては、79号の本欄でご紹介したリッツカールトンの広報ウーマンの「1泊あたり3〜5ドル」とは微妙に差があるあたりが、チップ問題のひと筋縄ではいかない奥深さを感じさせるところでもある。

▼人前では旅慣れた風を装っているエグゼクティブの皆さん、もはやこの期に及んでホテルで払うチップの金額などという初歩的なことは、他人に聞くこともできない。だってみんな彼に聞くんだから。この記事をこっそり切り取り、折り畳んで財布の中にしまったという噂。

聞かないは一生のドジ。

2010/6/6
USA Today
(USAトゥデイ)


ゲストの皆さんの選択なので…。

▼ 昨今、とみに増えたのが、客室の掃除やターンダウンサービスのオプション化。バブルの頃はといえば、ハウスキーパーたちは日に三度は部屋にやってきて、一回使っただけのタオルを取り替え、石けんやシャンプーすら使用済みは即新品に入れ替え、シンクの水滴をたんねんに拭き取り、空のゴミ箱を逆さに振り、数時間前に拭いたばかりのデスクにさらに磨きをかけたものだった。

そうしたことこそが、高級ホテルの証であると教えられてきたものだったが、景気の良し悪しによって朝令暮改があるのはホテル界の常。ある日突然、「モッタイナイが今日から我がホテルのモットーとなった」と宣言された。

▼折よく世はエコフレンドリー全盛。「環境保護のため」という言い訳がつけば、何でも正しくなるご時世。「環境保護のため、タオル交換は一日一回に…」「シーツ交換は連泊の場合、三日に一度とし…」「お部屋の掃除は一日に一度」。

やってみると、これは使える! 経費を大幅に減らせるのだ。経営サイドはほくそ笑んだ。そして、そうした本音はじっと隠したまま、「環境保護のため、もしお客様がタオルの交換を望まない場合はこの札をおかけください」と、ゲストの良心を問うという巧妙な方法を取ったのだった。

だいたい「我が社では、サスティーナブル(持続性がある)であることを第一に考え…」と経営者が言う時は、地球資源のことではなく、彼の会社のことなのである。

▼記事では、「環境保護のため」の経営方針の変更により、部屋の清掃の回数を減らされたおかげで、不満いっぱいのスターウッド系のハウスキーパーのお話。時間をおいた汚れは落ちにくくなるし、一回当たりの仕事量が増えてかえって大変になったと怒る。彼女たちにとっては、チップの機会も減ることになる。「無駄」こそが高級ホテルにおける非日常的な贅沢さを、優雅さを作り出すものであ〜る…そう昨日まで言っていたのは誰だったろう? 

減るものは、問わず。

Copyright (C)2011 Hiroshi Mori Corporation All Rights Reserved.